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気の抜けた襲撃

 裏路地に入っていく。

 このまま進むと工場地帯に向かう道であるため、人通りはかなり少ない。

 途中で人気の無い公園に入り中央にある鳩時計と街頭の下に立つ。

『興全寺の監視が何処に居るか分かるか。』

『我はセンサーではない。』

『街は人間が多すぎて分からない。』


 公園の入り口に黒いバンが止められ、男達か出てくる。

 人数は五人。

 思っていたのと違い、ホストっぽい格好が多い。

 バットや鉄パイプを提げているのが分かる。

『封印結界の対策は?』

 珍しくハルから質問してくる。

『俺にそんな対策できる技術は無い。』

『ケンジ、どうしよ?』

『黒竜にはならないようにして欲しいが、結界を破るのに、瘴気を使っても良い。』

『分かった。』

『その後は殺さない程度でやっちゃって。』

 そこそこ荒事を仕事として熟しているのか、黙って囲むように展開してくる。

「トンファー。」

 力場で作られたトンファーを両手に握る。

 トンファーはさほど得意ではないが、鈍器のガードぐらいには使える。

 無言で振り下ろされる鉄パイプを受け、脛のローキックを内腿に叩き込む。

 きれいに極まれば、足が無くなったように感覚が無くなり立てなくなる。

 痛みよりそれで立てなくなる。

 止めを刺す前に金属バットが頭を狙ってくる。

 人間の頭をフルスイングしてくるなんて、この日本じゃ狂ってるとしか思えない。

 一千万円にも満たない金額でそこまでできるものなのだろうか。

 頭を下げながら守り、辛うじてトンファーを取り落とさなかった。

 後ろから迫る鉄パイプは何とか身体を捻って躱す。

 明らかな殺意にあてられ、思考が攻撃に傾いていく。

 その隣にいる男に向かって右手のトンファーの短い部分を突き込む。

 頬あたりに当たるが、嫌な感触を伴っている。

 骨折ぐらいはしているだろうか。

 囲みから逃げ出すように左隣にいる男に右側から振りかぶる鉄パイプを受けながら回り込み、同じようにトンファーを回転させて当てに行くが、力が入っていないうえ、ガードされる。

 次の瞬間、俺を狙った金属バットがガードした男の肩口を捉えた。

 崩れ込む男を蹴りどけて、踏み込んでトンファーを突き込む。

 額あたりにヒットし、大仰に出血する。

 後ろでギンタに対して、結界発生の道具をずる賢そうな男が投げつけ、結界が展開していくのが横目で見えるが、恐らくギンタは大丈夫だろう。

 ローキックで動けなくなっていた男が片足で何とか立ち上がろうとしてる。

「このオッサンが。」

「伊達にお前らの倍ほど、生きてる訳じゃないぞ。」

 言いながら右足でガードごと側頭部を蹴り抜く。

 すぐに額を割って出血していた男がしゃがみ込んでいるところを顎を蹴り上げる。

 金属バットの男と対峙し、フェイントをかけてバットを振らせ、トンファーの短い部分を肋骨あたりに突き込むと、そこで蹲った。


 ギンタに封印結界を投げつけた男は、俺を見とめ、懐からバタフライナイフを取り出す。

 一際身体が大きく、筋肉質で一人だけゆったりしたカジュアルな服装をしていた。

 その目には興奮や躊躇いが少ししか見当たらない。

「刃物を出したってことは、自分もそうなるって覚悟はできてるんだな。」

 俺の言葉に反応せずに間合いを詰めてくる。

 トンファーを捨て、次の得物を出す。

「ショックバトン。」

 現れた魔法術式が施された警棒を逆手に握って構える。

 俺は左右の手を交互に円を描かせるように動かしながら構える。

 本来利き手でない左手には、ジャケット等を巻き付けて、刃を防ぎ、逆手に持ったダガーで斬りつけるためのスタイルだ。

 左手はそのまま義手が使える俺には取りやすいスタイルで、ダガーの攻撃バリエーションも大幅に増えることになるものである。

 オーソドックスの構えに順手でナイフを握っている。

 俺は躊躇なく間合いを詰め、突き出したナイフを左手を回転させて体の内側から外側に払い出し、左二の腕の内側に警棒を当てる。

 警棒に施された魔法術式は単純な衝撃力を発するものだ。

 不自然に男の身体が左肩を中心に二回転する。

 警棒は取り落とすというより吹っ飛んでいった。

 男の左腕は破壊され、蹲って呻いている。

 どのぐらいダメージがあったかは考えないでおこう。

 しかも、俺の手首にもダメージがある。

 非殺傷武器として作ってはみたが、そんなに使い勝手は良くないな。


『早かったな。監視は見つけられたか。』

『ダメ。すぐ逃げられた。』

 既にギンタは封印結界を破り、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきていた。

「鈴木さん!大丈夫ですか!」

 なんと、公園に小野くんが入ってきた。

 ちゃんと相手の車から距離を取っている。

 意外と冷静なんだな。

「ああ、まあ大丈夫だけど、どうしたんだ。」

「鈴木さんたちの後を付けている不審な車を見かけたんです。」

「警察は?」

「もう呼んでます。すみません。怖くてそれしかできませんでした。」

「充分だよ。ありがとうな。」

 程なくサイレンが聞こえてきた。

 また事情聴取を受けるかと思うとげんなりする。


 小野くんとギンタと三人でパトカーに乗せられて警察署に連れて行かれ、事情聴取を受けた。

 ギンタに配慮したのか、そこまで長い時間ではなかったが、また後日に出頭することになった。

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