炒り豆腐
痛みで目が覚める。
弾の通った跡が分かるほど、痛みと熱があるのだ。
暫く経てば身体が痛みに慣れてくるかもと思ったりもしたが、ギンタに痛みを堪えるところを見せたくないので、痛み止めを飲み、痛みが落ち着くまで、ギンタの寝顔を眺めておく事にする。
これからも、この間の奴らの様な者達に狙われたりし続けるのだろうか。
興全寺と中澤組は警察に目を付けられているだろうから、お礼参りも考えにくいし、暫くは大人しくしてるだろう。
朝食はギンタと二人で近くのカフェでサラダラップを食べる。
今日は白くて丈の短いシャツワンピースに膝丈の黒いスキニーのショートパンツを合わせておく。
着替えたギンタを見て、昨日何を買いに行ったか分かってしまった。
女性用下着を買いに行ったのだ。
俺はまだ四年生だと思って準備していなかったのだ。
水着のシーズンだから女の子同士で見て、話題になったのだろうか。
男手一つで女の子を育てるってのはやっぱり大変なのかも知れない。
掃除と修繕の見積もりに業者が来るので、ギンタと一緒に先に戻っておく。
内装業者は朝も早いうちから来て、見積もりを作ってくれる。
壁の修繕は在庫で賄えるらしく、明後日にも工事に入れるらしいので、お願いしておく。
続いて掃除業者が来て、現場説明をすると、早速掃除に入ってくれた。
血痕の主は生きていると伝えると、業者は少し安心した顔をして掃除にかかりはじめる。
掃除をしている横で散らかったものを片付けながら見ていると、道具も手際も素晴らしい。
まあ、こちらは腕も上らないので、仕方ないのもあるが。
引っ越したばかりで、血痕以外はお願いする所がなかったので、一時間も経たずに掃除は終了し、業者も帰っていった。
なんとか片付けを終えると、もう昼時だ。
『もう外食は飽きた。家で食べたい。』
『そうか。何か作れるか冷蔵庫を見てみるよ。』
『その代わり、料理の手伝いと食器洗いは頼むぞ。』
『うん。』
米はギンタに任せ、まだ豆腐の賞味期が切れてなかったのを確認する。
右手で左手を持ち上げれば、あとはなんとか作業はできる。
材料はギンタに取ってもらう必要があるが、なかなか伝わらないものもあって手こずる。
干し椎茸を戻し、冷凍庫に残っていた鶏肉を解凍する。
前に使った残りの胸肉の半分ほどだが、丁度良い量だ。
鶏肉は小さく切り、戻した椎茸とにんじんを細切りにして、青ネギは2cmぐらいに切りそろえる。
鶏肉、干し椎茸、にんじんをごま油で炒め、しょうゆ、戻し汁と出汁を入れてから豆腐と溶き卵を入れて炒める。
片手のときに買っておいた重い鍋が役に立った。
ネギは仕上げ前に入れてさっと合わせる。
味噌汁の実はじゃがいもだ。
あと、余分に剝いたじゃがいもを出汁、しょうゆ、みりん、砂糖で煮っころがしにしていく。
仕上げにバターを乗せる。
一口サイズのじゃがいもを茹でて皮剥きしたあとに煮っころがしにすると、格別なのだが、今日は体力も時間も余裕がない。
『炒り豆腐だ。ご飯と良くあうぞ。』
『優しい味。じゃがいもも甘くて美味しい。』
ギンタは茶碗のご飯に炒り豆腐を乗せて掻き込んでいる。
良い顔で食べてくれていると、また作りたくなるな。
『洗った。』
食器を洗い終えたギンタが今日もタケヒコの所に行くと言い出したので、揚げを炊いて持たせる。
『タケヒコに少しお願いしたい事があってな。』
『なに?』
『タケヒコの顔見知りの陰陽師に、顔つなぎをお願いして欲しいんだ。』
『陰陽師って何?』
『簡単に言うと、日本の魔法使いだな。』
『もし、駄目でも連絡先や居場所を聞いてきて欲しいんだ。今回の事件でギンタの事が知られるだろうから、先に敵対しない事を伝えておきたいんだ。』
『分かった。』
今後、敵対する可能性も無くはないだろうから、多少でも情報は得ておきたいし、先に接触できて、敵意が無いことを示せれば儲けものだ。
返事をすると、お供えを持って出ていった。
部屋に残された俺はハルと話をしていた。
『陰陽師の情報は集まったか?』
『まだ多少というところだ。』
『俺の認識だと、五行の力と複雑な術も式神も使う万能型魔法師ってところかな。』
『西洋の魔法師とは違い、学問として発達してきたため、符も使い効率的なマナの行使をする。』
『裸一貫なら魔法師で、準備万端なら陰陽師に軍配が上がるってところかな。』
『概ねはそうだろう。』
『最後は喧嘩と一緒で、流儀よりも個人の資質か。』
『最近、好戦的だな。』
『そうか?』
『侵入者を制圧しようなんて、通常は考えん。』
『そうか。元々、争い事は嫌いな方だった。きな臭い修羅場に慣れてきてしまったから、仕方がない。』
『他人のせいにするな。』
本日のご飯
○朝食(外食)
・サラダラップ
○昼食
・白米
・炒り豆腐
・じゃがいもの味噌汁
・じゃがいもの煮っころがし、バター乗せ




