事情聴取
ギンタと一緒に警察に出頭して、事情聴取を受ける。
襲撃してきた奴らは、警察に一網打尽にされたため、身元の判明は早かったようである。
院苛宗 興全寺の僧侶と坪菱会 中澤組という暴力団の構成員らしく、その名前に聞き覚えがないか問われたが、全く心当たりがない。
この二つの組織はよく組んで、悪事を働いていると有名らしい。
男を攻撃した魔法については、再現しておいた魔本を使ったことにしておき、参考として警察に渡すこととなった。
魔法道具で魔法を行使する人間が殆どいないため、規制等の対象にはなっていないが、持ち歩けば銃刀法違反の対象にはできるらしい。
今回は自宅だから、その点は不問にしてくれるようだ。
魔法自体については、規制が難しいことと、一撃で人間の命を奪うような威力のものを行使する人間がそうはいないこともあり、特別な規制はないとのことだ。
取り調べのあと、腕に覚えがあるからといって、危険な行為はするなと長々と説教をいただいた。
因みに、殺しかけててしまったあの男は、スーパーウェルター級の元日本チャンピオンらしく、そのおかげで腕に覚えはあるとの評価をもらえたようだ。
強い筈だ。
中澤組からの報復は、警察の目があるので、そこまで気にしなくて良いと思っているが、院苛宗とやらの動きが気になる。
あと、捜査中のため事件について極力話さないようにと念を押されてから警察署を後にする。
そういや、こんな事件なら、公安が動きそうな気もするのだが、実際のところどうなんだろう。
『そういや、ギンタを結界か何かで捕まえようとしていたのか。』
『ああ、法力による捕縛術のようだ。』
『そもそも法力って何だ。僧侶が使う力なんだろ。』
法力とは勿論、僧侶が厳しい修行の末に身につけるものであるらしい。
根本的に自然のマナ、五行の力とは異なるものを行使する。
簡単に説明すると、法力とは魔力で収集したマナを一旦、無属性のマナに置き換えを行い、術を行使する。
そのため、強大な力を行使することはできないが、自由度が高いとのことだ。
安定して同じ効果の術を習得した者全てが行使できることが最も大きな特徴となる。
そのため、木、火、土、金、水などの属性を用いての魔法と比べ、捕縛や打撃、強化や守備と万能型であるらしい。
前の時代のトリヴォニアでは全く研究の進んでいなかった、無属性のマナであるが、こちらでは以前から実用化されていたということである。
『なら、五行の力を使う陰陽師だと、魔法使いに最も近いということか。』
『それ以上に複雑な術を使うらしいし、符術との組み合わせにより、高度な術を行使するらしい。』
ハルの知識が気が付けばどんどん増えていってきている。
『式神とかはあるのか。』
『その辺りの技術体系は公にされていないが、あるらしいとの噂だ。』
『話を元に戻すけど、何の目的でギンタを狙ったんだろうか。』
『院苛宗は管狐や魑魅魍魎を使役する術を持っているらしい。捕らえて何かに利用したかったのかも知れん。』
『瘴気を操ることができるギンタなら相当役に立つんだろうな。』
ギンタの事情聴取については、トリヴォニア語かグロニスク語が使える警官の手配に手間取っており、後日連絡があるとのことだった。
ギンタと昼食を摂るため、ホテルに向かう。




