七夕
餃子チェーン店を出たあと、ハルが声を掛けてくる。
『タケヒコが呼んでるぞ。』
『何かあったか?』
『七夕だ。』
「しまった。忘れてた。」
『まだ今からなら間に合うらしいぞ。』
『タナバタって何?。』
ギンタと急ぎ足で浅葱稲荷に向かう。
神社の規模が小さいため、露店は五軒ぐらいしかないが、それなりに人出がある。
社務所の前に子供達が短冊を書くコーナーが設けられている。
『短冊、その色の付いた紙に願い事を書いて、笹に…』
笹でなく明らかに竹だったが。
『結んで掛けると、願い事が叶うと言い伝えがあるんだ。』
『分かった。書いてみる。』
短冊を結んだあと、露店を見る。
遊びは金魚すくいしかない。
『やってみるか。』
『魚がいっぱいだ。』
やり方を教えてみるが、力加減が分からないのか、水に入れてすぐポイが破れてしまう。
「おじょうちゃん。初めてかい。サービスしとくよ。」
『何て言ってる。』
『初めてみたいだから、サービスしてくれるってさ。』
『日本語でありがとうは何と言う。』
「ありがとう。だよ。」
「ありがとう。」
ギンタがたどたどしく礼を言う。
結局、その後、ちゃんとお金を払って三回した。
最後に何とか一匹は掬えたので、ご機嫌で金魚を入れた袋を眺めながら家に向かっている。
わたあめもかなり喜んではいたが、金魚が一番だったようだ。
明日、金魚鉢を買ってこよう。
翌朝、たまごサンドとハムチーズサンドを作る。
ついでに昨晩から仕込んでおいたひよこ豆の様子をみる。
夜のうちに保温鍋で茹でてもどしておくのだ。
保温鍋だと沸騰させて置いても、皮が取れたりせず、一晩戻して茹でた時のように仕上がる。
前に料理本に書いてあったように圧力鍋で戻したところ、空気穴に取れた皮が詰まって悲惨な事態を招いた事がある。
ただ、まだ心持ち固いので、もう少し茹でる必要がある。
昼のサラダに使いたいので、もう一度沸騰させて保温鍋に戻しておく。
朝食を済ませ、ギンタを着替えさせてからホームセンターに向かう。
今日はノースリーブのワンピースに白のブラウスを選ぶ。
やはり、オーソドックスなのが似合う気がするが、最近、雰囲気も柔らかくなってきている気がするので、それに合わせてカジュアルも攻めていこう。
ペットショップも併設されている店舗だ。
『珍しい魚が沢山いる。』
『テレビで見た小さい犬だ。』
『綺麗な色をした鳥がいる。』
ギンタは珍しそうに、ペットコーナーをくまなく見て回っている。
『ケンジ。珍しい魚や動物が沢山いる。』
『みんな、ペットとして飼うために色んな国から集めて売っているんだ。』
『そうか。』
昔ながらの金魚鉢、底の砂利と餌を買って帰る。
ギンタは金魚鉢で泳ぐ金魚を眺めている。
『水族館とか動物園なら、もっと珍しい魚や動物が沢山いるぞ。今度、行ってみるか。』
『うん。約束。』
さて、あっという間に昼時だ。
まずは、戻して炊いたひよこ豆。瓶に詰め、ドレッシングに漬けておく。
土鍋でアジア風チキンライスを炊く。
ガーリックを効かせて鶏もも肉の表面を焦がし、一旦鶏肉を取り出して研いだ米を炒める。
鶏ガラスープ、酒、ナンプラーで味を整えて、鶏肉を細く切ってから鍋に戻して炊く。
皿に肉と米を盛り、サラダボウルにレタスと細切り人参を盛り、漬けたひよこ豆をドレッシングごとかけて、サラダは完成だ。
ついでにタケヒコの揚げを炊く。
今日は菜っ葉と揚げと関西風に炊き合わせておく。
『今日は、学校に必要な物を買ってくるよ。タケヒコにまたお供えを頼むな。』
『うん。分かった。』
一日で全部揃えるのは大変なので、分かるものは先に買いに行く。
子育て経験があって良かった。
今日のご飯
○朝食
・サンドイッチ(たまご、ハム&チーズ&レタス)
○昼食
・アジア風チキンライス
・ひよこ豆のサラダ




