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餓鬼退治

 タケヒコにおはぎを供えたあと、その足で前のマンションに向かう。

 日没後ではあるが、夏の都会の夜は明るい。

 ギンタには動き易いよう、サロペットにブラウスを着せている。

『どちらか気配を感じられるか。』

『うん。分かる。』

『我よりギンタの方が得意だろう。』

「クリーヴ。ダガー。」

 力場で臑当が形成される。

 足を守れば、足技が使える。

 刃物を持つ相手に足を出しても斬られるだけだからだ。

 武器はダガーを選ぶ。

 確実に息の根を止めるには、良い武器だと思っている。

 この日本で餓鬼も武装しないだろうから充分だろう。

『どれぐらいいるか分かるか。』

『うん。八体。』

 ギンタが指さす先、手前のゴミ置き場に二体、マンションの駐車場の隅に三体が見える。

『あと三体は壁の向こう。』

『好戦的なら良いんだが。』

 臆病なら逃げ隠れるのを探す必要があるから面倒だ。

 近付くと餓鬼は俺に気付く。

 俺が餓鬼の存在に気付いている事を確かめているようだ。

 目が合うと敵意を丸出しに、こちらに向かってくる。

 予想どおり武装はしていない。

 膚は灰色で、見た目はほぼゴブリンと変わらず、やや手足が細く全体的に細いイメージである。

 クリーヴを装備しているので、何の心配もなく、顔面を蹴り込む。

 倒れた餓鬼の頭を三度踏みつける。

 コンクリートで力が逃げないうえ、モノコック構造である頭蓋は追い討ちに弱い。

 もう一体の側頭部を蹴り抜き、うつ伏せに蹴り転がして、押さえ付けながら、逆手に持ったダガーを喉に当てる。

『情報は取れたか。』

『充分だ。』

『後はさっさと片付けるか。』

 ゴブリンと変わらず好戦的で、駐車場の隅にいた三体がこちらに向かい駆けてくる。

 今度は腹に前蹴りで動きを止め、ダガーを首筋に二回突き立てる。

 襲いかかるもう一体の爪をダガーで防ぎ、左手でもう片方の爪を防ぎながら喉を掻き切る。

 残る一体が左側から迫るのを、足刀で膝を蹴る。

 踏み込んで喉を掻くが、浅かったため、返して右側の首筋にダガーを突き立てた。


 改めて見ると、無惨な死体が転がっている。

「片付けの事を考えて無かったな。」

『肉体の構成の大半をマナと瘴気で構成されているから、瘴気を浄化すればほど何も残らない。』

 ハルが教えてくれる。

『ギンタ、済まないが片付けを頼めるか。』

『うん。浄化する。』

 ギンタが手をかざすと、餓鬼たちの遺体が崩れてゆく。

 ただ、何か汚らしい物は後に残っているが、そこまで気にしないでいいだろう。

『ギンタ、ありがとう。』

『これは、私の仕事だし。』

『残りは三体だな。』

『次はスローイングナイフを使ってみろ。』

『何でだ。』

『実験だ。』

 マンションの側面から人が入れるぐらいの建物の間を覗くと、餓鬼が見える。

 用意をしていた電撃効果のあるスローイングナイフを投げつけると、短い悲鳴をあげて、餓鬼が浄化された時のように崩れ落ちる。

『実験成功だ。肉体におけるマナと瘴気の構成割合が高過ぎるため、マナを内部に送り込めば崩壊すると踏んだのだ。』

『なるほど。』

 一本は距離を外したものの、スローイングナイフだけで危なげなく残りの餓鬼は駆除できた。

 ただ、スローイングナイフは威力は高いが、距離により刃と柄を持ち替えて投げないといけないので、これ以上大量に出てくると面倒なので、何か対策を考える必要がある。

『辺りを浄化してくる。』

 そう言ってギンタはマンションの周囲を回り始めた。


 10分ほどでギンタが戻ってきた。

『終わった。』

『そうか、今住んでいる所は大丈夫なのか?』

『もうコントロールできるから大丈夫。』

『タケヒコにも礼をしないとな。ハル、寄進とかしたいとから、どのぐらいにすれば良いか探りを入れてくれ。』

『ああ、その事なんだが。』

 ギンタが続ける。

『今日みたいに餓鬼みたいなのが出た時に片付けて欲しいって言ってた。また今度別の場所に行って欲しいって。それと、揚げらしい。』

『お安い御用だ。』

 スローイングナイフだけで大半が片付く事が分かったし、そんなに大変でもないだろう。

『さて、遅くなったし、今日はどこかに食べに行こうか。』


 餃子の美味しい中華料理チェーンに向かう。

 餃子、ラーメン、チャーハン、唐揚げとオーソドックスなメニューが並んでいるが、味も値段もバランスが取れている。

『ケンジのご飯も美味いが、日本は何処で食べても美味い。』

 チャーハンを頬張りながら、機嫌の良い笑顔を向けてくる。

『まあ、ギンタが生きてきた時代と比べれば、豊かになっているからな。』

今日のご飯

○夕食 (外食)

・餃子チェーン店

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