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タケヒコからのクエスト

『タケヒコから前に住んでいた場所に餓鬼が発生していると連絡があった。』

『餓鬼ってなに?』

『ゴブリンみたいなものだろ。』

『それで。』

『お前から漏れ出た瘴気が原因だから、付近の住民に被害が出る前に片付けろということだ。』

『タケヒコが言うならやってあげる。』


 朝からギンタとハルの声で目が覚める。

 因みにギンタは声を出しているが、ハルの声は頭に直接響いてくる。

 ハルは今まで、前の時代のイングナというトリヴォニアの精霊師以外の人間には知覚すらされなかった存在であるため、何だか不思議な感じだ。

『おはよう。ケンジ。』

 バジャマ姿のギンタが俺が起きた事に気付く。

「おはよう。」

 頭を撫でながら日本語で挨拶を返す。

 この可愛さは、俺が死ぬまではほとんど姿が変わらないだろう。

 なんて贅沢なんだ。

 その代わりヴァージンロードは諦めないといけないが。

『朝ご飯食べながらでいいから、さっきの話、詳しく聞かせてくれ。』


 手早くご飯の準備にかかる。

 ご飯は一人用の土鍋で炊くと早いし、美味しい。

 一人用の土鍋でちょうど一合が炊ける。

 米を炊いている間に、切り干し大根を戻す。

 冷蔵庫には牛乳、豆腐と卵しか入っていない。

 鶏ガラで餡を作る。

 天津飯の餡は白いのが好みなので、塩と酒だけで味付けする。

 戻した切り干し大根は絞って、短く切ってから酒と醤油で味付けしてさっと炒めておく。

 乾物しか見当たらないので、割いた干し鱈をさっとごま油で炒め、干し椎茸に豆腐を入れ、スープを作る。

 割いた干し鱈はいつもコリアンタウンで買っている。

 実はこの料理が『プコグ』と言うのを最近知った。

 コリアンタウンの人に出汁が出るからと教えてもらって作っていたからだ。

 そう言えば、山形のダシも母方の祖父のためによく作ってはいたが、その名前も最近知ったところである。

 米が炊けたので、皿に盛り、一人分ずつ切り干し大根を入れて卵を焼き、ご飯に乗せ、餡をかけて出来上がりだ。

 卵は中華鍋で焼くとふわふわに焼ける。

『ん。』

 肉は無いが機嫌よく食べてくれている。

 切り干し大根と卵の相性は良い。

 台湾風も良いが、炊いて残った切り干し大根を玉子焼きにしても、かなり美味い。

 今回のは炊いているのではないので、切り干し大根にシャキシャキ感がある。


 食べながら話を聞く。

 どうやら前に住んでいた場所に短い期間ながら瘴気が滞留し、餓鬼が湧いているらしく、気付いたタケヒコから退治するよう言われたらしい。

 あと、残った瘴気も浄化しろとのことだ。

『瘴気の浄化なんて出来るのか?』

 ギンタに聞いてみる。

『ああ。タケヒコから教えてもらった。まだ覚えたて。』

 有り難い。

 タケヒコにはもうお供えだけでは足りないぐらいだ。

 そのうち、きっちりと寄進しにいこう。

『そう言えば、餓鬼とゴブリンは違うのか。』

『瘴気から湧くのは同じだが、瘴気を元に発生するためか大量発生する傾向があるらしい。』

『見てみたいな。』

『そうだな、ゴブリンとの相違が気になるところだ。一般の図書館には参考になる文献も少なかったからな。』

 いい歳しても、好奇心は無くならないし、ハルも同じだ。

『今から駆除しに行くか。』

『夜行性だから、行くのは日暮れ以降が良いらしい。』

『あれ、タケヒコからか。』

『ああ。』

『物理的に退治出来るか聞いてくれないか。』

『お前がする積もりか。』

『何となくね。』

『大丈夫らしい。』

『決定だな。』

今日のご飯

○朝食

菜脯蛋ツァイブータンの天津飯風

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