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麻婆豆腐

 何故か、昼から近くのイタリア料理屋を貸し切って昼食会になってしまった。

 しかも、何故か俺の奢りだ。

「ギンタちゃんっていうの、可愛い!」

「良く食べるわね!」

「何が好きかな?」

『ケンジ。食べる時ぐらいは静かな方が良い。』

 メインディッシュを一品各自頼んで、アンティパストやパスタをテーブルの中央に置いてつつくようにしている。

 こんな感じで自由にさせてくれるので、普段からよく使っている店なのだ。

 俺は鱸のグリリアで、ギンタは予想通りというか、肉だ。

 仔牛のローストを頼んでいた。

 ギンタはぶつくさ言いながらも肉を口に運んでいる。

『たまには皆で一緒に食べるのも悪くないだろ。』

『度々は困る。』

 そう言いながら、ワゴンに載せられてきたドルチェをちゃっかり二品とっている。

 他の女子社員も同じように二品取っていたからだ。

 オルガとは違い、ガロンも一緒にいてくれたこともあるからか、そこまで人間を避けることもないため、安心した。

 これなら、当初の予定どおり学校に通えそうである。


 駅前の不動産屋に向かい、不動産屋の車で物件を見て回る。

 先にネットで下見はしていたので、実際の物件確認だけになるので、今日中に決める積もりである。

 結局、二人共無頓着なので、出来る限り職場に近い所に決めた。

 保証人は小野くんか小森くんに頼む事にして、先に精算を済ませておく。

 住民票と会社の登記やなども念の為持ってきたのが効いていたのか、あまり細かいことは言ってこなかった。

 明後日を引っ越しの日に決め、引越し屋を手配する。

 そういえば、今まで自力で引っ越しをしてきた記憶しか無い。

 結局良くわからないので、不動産屋に聞きながら、プランを選ぶ。

 今住んでいる部屋も同じ不動産屋の仲介だったため、今住んでいる場所の退去手続きもついでにお願いする。

 退去については本来二ヶ月前に伝えることとなっており、通常であれば来月分の家賃を取られるところであったが、何とか免除してもらえるよう取り計らってくれた。

 今月分は満額取られるのを申し訳無さそうに伝えてきたが、こちらの都合なので、来月払わなくて良いだけで充分ありがたい。

 自分の都合ならその辺りも考えて無駄にしないようにしただろうが、今回はギンタのための必要経費として割りきっている。


『落ち着かない色は嫌いだ。』

『明るい色の服を着てみたら、ガラッと雰囲気も変わるし、絶対似合うぞ。』

『嫌だ。大体、本当は子供じゃない。』

 帰りに、子供服を売っている店に向かい、まだ足りないギンタの服を選ぶが、黒・白・グレー以外は反応が悪い。

 姿形は10歳程度ではあるが、普通の人間の何倍も生きてきている。

 今更好みは変えられないところもあるのだろう。

『じゃぁ、デザインは俺が選ぶからな。』

『それは任せる。』

 無地かストライプしか選ばなかったが、一着だけ、ブルーグレイをベースにした花柄のシャツは気に入ってくれた。

 もうそれは、褒めまくってなんとかその気にさせたのだ。

 花柄ではあるが、ブルーグレイを基調としているので落ち着いた雰囲気のものだ。

 ぜひ、ワンピースと合わせて着せたい。


 スーパーに寄るころには日も暮れていたので、急いで帰り、夕飯の支度にとりかかる。

 宣言通り、茶碗に白米が合うおかずを作っていく。

 今日は、ピーマンの炊いたのに、麻婆豆腐と鮭の西京焼きにキャベツと玉ねぎの味噌汁だ。

 西京焼きは、今日は既に漬けてあるものを買ったが、息子が好きだったので、前の世界にいた時は、荒味噌を買って漬けていたことを思い出す。

 それにガーリックとブラックペッパーを効かせたもやしのナムル風を付けてある。

 先に辛いのは大丈夫だときいていたので、麻婆豆腐の辛さはそこまで控えてはおらず、花椒が手に入らなかったので、山椒を代用して少しピリ辛に仕上げていたが、問題なく食べていた。

 箸の練習も必要だが、逃げ場を作るために麻婆豆腐にし、予想通りレンゲで食べている。

 しかし、持ち方は悪いものの、おかずはなんとか箸でつかんで食べている。

 この調子なら箸もすぐに慣れて使えるようになりそうである。

『肉が少ない。』

『麻婆豆腐にひき肉が入ってるぞ。それに魚も付けてるのに。』

 相変わらず肉食なコメントをいただいたが、残さず食べてくれた。

今日のご飯

○昼食(外食)

・仔牛のロースト(鱸のグリリア)

・アンティパスト数種

○夕食

・ピーマンの炊いたん

・麻婆豆腐

・鮭の西京焼き

・もやしのナムル風 (ガーリックペッパー)

・キャベツと玉ねぎの味噌汁

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