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結界破壊

 ゴブリンの巣に戻ると、雌達が再び怯えた目で俺を見る。

『黒竜を結界から出すのに、ここを吹き飛ばす必要があるみたいだ。申し訳ないが、何処かに避難してくれないか。』

 最も大きな雌が一歩踏み出してくる。

『ここは、良質の瘴気があり、子育てに向いた場所でした。ただ、伝説の黒竜様を助ける為ならば、我慢いたしましょう。』

『そう言ってくれると助かる。彼女とは古い友達なんだ。』

『ただ、何故人間の貴方が黒竜様を助けようとするのですか。』

『大昔に北のトリヴォニアとヴィリニュスにいる魔人と戦ってたんだ。その時に、人間を魔境に呼び寄せる情報を渡す代わりに中立になってもらったんだ。』

『よく分かりませんが、嘘はついていないようですね。』

『君やオルガみたいな人達が居れば、人間と魔物が不必要に争う事も無いんだろうな。』

『変な人間ですね。』

『よく言われるよ。そうだ。雄達が居なくなったから、暫く食料に困るだろう。避難先を教えてくれれば、手持ちの分は譲ろう。』

『必要ありません。雌でも立派なゴブリンです。自分達だけで狩りも出来ます。』

 そう答えると、雌ゴブリン達は荷造りを始めた。

 雄達の遺体から銃を回収し終えると、彼女らは寺院から去っていった。


『プチメテオがどれぐらい要るか分かるか。』

『いや、不明だ。』

『取り敢えず、10発ぐらいにしとくか。』

『それは多そうだ。最初は五発でいこう。』

 プチメテオは俺の持つ魔法で最も威力の高い魔法で、上空8000メートルから重さ100kgの紡錘形の鉛の棒を落下させるものだ。

 単純な仕組みの質量兵器で、着弾まで二分かかるという難点もあるが、破壊力が凄まじいだけでなく、落下数を自由に設定出来るため、使いようによっては、都市を一瞬で壊滅させることも可能である。

 ただ、事前準備に20分程度かかるため、通常は戦闘前に準備しておき、必要に応じて発射するという使い方になっている。

 今回は、雌達に合う前から準備をしていたので、いつでも発射できる。

『じゃあ、お薦めの五発からいくか。』

『ああ。』

 時間近くになったとき、五本の赤く燃える流星が寺院を直撃する。

 障壁を張って備えていたが、閃光とソニックブーム、それに加えて飛来する瓦礫が襲いかかり、障壁はすぐに罅だらけになり、慌てて障壁を張り直す。

 爆風が落ち着き、着弾点を見遣ると結界に包まれた黒竜のみが残っている。

 近付いて障壁を張り、足元の瓦礫を投げつけると、粉々になった瓦礫が飛んでくる。

『まだまだじゃないか。というか、あれでよく俺が無事だったな。』

『義手の力場の崩壊のエネルギーによって一部の力が相殺されたからだ。もう一度、五発で試してみよう。』


 プチメテオの魔法を先ず五発、その後、追加で一発ずつ落とし状況を確認する。

 八発目で、投げつけた石が壊れずに跳ね返るだけとなった。

 また、瘴気が消えたためか、結界は透明になっており、内部が見渡せるようになっている。

 黒竜の真下に鈍く輝き、不思議な模様の浮かぶクリスタルが目に止まる。

『我に結界の解析をさせたいのであれば、結界石は右手で掴め。』

『分かった。』

 腹を決め、頭から結界に突っ込んでいく。

 結界の表面では、弾かれる感触がするが、内部に入り込むと、全方位からの圧力になる。

 足を地につけ、腰を下ろし、圧力の中を進んで行く。

 目的の結界石は、黒竜の足元に無造作に転がっているように見える。

 あと数歩。

 二回目は無理だろうな。

 そうならないよう、力を振り絞り結界石を掴む。

 何の抵抗もなく結界石は俺の手に収まった。

 そのまま結界を出ようとするが、結界石がその中心となっており、結界ごとオルガから遠ざかる事となる。

 オルガから離れるほど、その力は弱まっていき、10メートルも離れると、遂に結界は消えた。

『非常に強力なものだが、使い捨てで使用するものようだな。』

『もう解析はできたか。』

『ああ。全く同じ物はできないが、機能は再現できるだろう。』

『なら、破壊するぞ。』

「砲撃。」

 地面に結界石を置き、砲撃の魔法で打ち砕いた。

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