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新魔法活躍

「シールド。」

 指鉄砲のままの指先付近に畳二枚を立てた大きさの半透明の障壁が現れる。

 飛来する銃弾では障壁に傷すら付かない。

 防弾ガラスを模して作成した障壁である。

 ただし、樹脂類は魔法術式で再現が困難だったので、強化ガラスのみを重ねた古いタイプのものである。

 そのため、耐久力を超えそうな場合は罅が入るなりする。

 先程の砲撃の魔法もで一発だけは耐えられる程度にはしてある。

 門と障壁の隙間を抜けて来るゴブリンを狙い撃ちにするため、砲撃の魔法と同じように指鉄砲で狙いをつける。

「ショットガン。」

 発砲後に砲身はすぐに消える。

 三発ほど撃ったところで、障壁に向かって鉈を振り、弾き返されるゴブリンの背後に右手の崩れた壁に向かう影が見えた。

 崩れた部分に近づき、壁越しに魔法を放つ。

「陽炎。」

 10メートル前方に固定され、そこに高熱を生み出すため、壁の向こう側で魔法が発現する。

 前の時代から使用していた魔法だが、燃焼効率を上げ、白い炎になっていたが、そのまま赤色を意味する『クリムゾン』と名付けていた。

 恥ずかしい話だが、辞書もない環境だった事は言い訳にしたい。

 元々、炎の魔法を術式にしたものを応用し、火炎として発現させていたものだったが、新たに作り直す際に、純粋に熱量の移動のみを行うように修正した。

 これにより、炎は出なくなり、高熱が発現した場所は陽炎のように見えるようになったため、そのまま『陽炎』と名付けた。

 警戒のため崩れた部分の手前からこちらを覗こうとしていたゴブリンの叫び声と銃が暴発する音が聞こえる。

 焼け爛れたゴブリンが壁から姿を現したが、声からすると、二体分だろう。

 後を振り返ると一体障壁の間を抜けており、その後に銃を装備したゴブリンが来ているのが見える。

「クレイモア。」

 対人地雷を模した魔法が発現し、爆風と共に大量の鉄片を撒き散らす。

 手前のゴブリンは倒れ、後のゴブリンも銃を取り落としている。

「ショットガン。」

 後は残り三体。

 ゴブリンが壁を越えて上から飛び掛かってきた。

 前後に気を取られ、気付けなかったのだ。

「うわぁっ。」

 情けない声から俺の口から漏れる。

 何とか鉈を左手で受けてしのぐ。

 義手はまだ破損していない。

 もう一体壁の上部に手を掛けているのが見えたが、目の前から確実に片付ける事にする。

「ハル、アンロック。」

 指鉄砲のまま固まっていた左手が動き出す。

 ゴブリンと対峙し、内側から左手を円を描くように振り出す。

 それに応じるようにダガーを持つ右手も円を描く。

 スポーツの審判のするようなこの動きは、本来なら、ナイフを持たない腕にジャケットなどを巻いて相手の刃を防ぐ動きである。

 三周目で義手が鉈を捉え、一瞬動きが止まったところで、右手のダガーが肘の内側を切り裂き、返してそのまま首元に刃を立てる。

 鉈を取り落とし、怯んでいるのを見て、首元にダガーを三度突き立てた。

「シールド。」

 壁の上部のゴブリンが銃で狙いをつけようとしているため、障壁を展開する。

 ゴブリンは三発小銃を発砲したあと、飛び掛かってくるが、斜めに展開されたそれに飛び乗ると、地面に滑り落ちる。

 銃は手を離れ、ストラップで下がっている。

 立ち上がり、銃を構えようとするその銃身を左足で蹴り、顔を掴むように左の親指を右目に突き入れながら、前進して首元にダガーを何度か突き立てる。

 義手に触覚が無くて助かる。

 吹き出す青く濁った血が顔に掛からないよう仰け反りながら突き倒す。

 身を屈め、周囲を警戒しながら、次のゴブリンを探す。

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