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出発準備

 教習所に通って一月経ち、試験場に来るまで漕ぎ着けた。

 実技は問題ないし、当然か。

 若い子に紛れて授業を受けるのもこれで終わりだ。

 若い子よりも、年齢が近い綺麗な主婦層に目が行くが、既婚者は拙いと思って大人しくしていたのだが、少し後悔してみる。

 欲求不満というか、人肌が恋しいな。


 新たな魔本の準備も完了だ。

 今度は本ではなく、携帯情報端末だが。

 小野くんにもかなり手伝ってもらったが、なんとか魔法術式は言語化まではまとまっていないが、ライブラリ集程度には使えるレベルまで持っていけた。

 また、力場での義手の生成も実現し、その中に携帯情報端末を収める事で、見かけは身一つで魔法を使う事も出来るようにした。

 携帯情報端末から魔法術式を発動するため、使える魔法の種類も増やすことができた。

 力場との併用で前の時代よりも更に充実し、装備も生成できるようになったのは非常に大きく、便利だ。

 まだ、モノにはなってはいないが、CPUを積んだ小型基盤とカメラとやセンサー類を追加し、弾道計算や自動防御機能の構築も考えている。

 思い付くまま色々なものを開発しつつあるが、この時代で使う事は無いだろう。

 いや、無いようにすべきなんだろう。

 ただ、この世界にいると、ついつい自衛のためと思って魔法を開発したくなったりしてしまう。


 会社の方は、新しいプロジェクトも開発や準備を進めていく段階なので残る社員に任せていれば大丈夫だろう。

「小森くん、ごめんね、二・三週間ぐらい留守にするけど。小野くん、この間のアレ、ありがとう。何とか今回の旅に間に合ったよ。」

「戦争でもしにいく気ですか!?」

 小野くんが聞いてくる。

「いやいや、そんな物騒な。」

 確かに、言われてみれば、物騒なのは俺の装備の方かも知れない。

 小野くんには魔法術式の言語化の作業も手伝ってもらっているので、ある程度の魔本の内容を知っているのだ。

「少しだけ記憶が戻ってきて、知り合いが魔境にいるのを思い出してね。向こうは物騒だからさ。ただの自衛だよ。」

「行った事があるんですか。」

 二人が驚いて聞いてくる。

「随分昔だから、様子が変わってるだろうけど。ゴブリンやら何やらが結構出るんだよ。」

 まあ、その随分が300年以上になるのは秘密だ。

「しかし、ニ・三週間って何でアバウトなんすか?」

「連絡先とか思い出せないから、現地に直接行くんだけど、うろ覚えなんだよな。」

「要するに当てもなく彷徨うって事っすね。」

「その通り。」

「それって、もしかして、コレっすか?」

 小森くんが小指を立てて聞いてくる。

「性別はな。」

「鈴木さんもまだ記憶が全て戻ってないだろうし、邪推は良くないよ。」

「まあ、本人に会って確認してくるよ。」

 まあ、小森くんの想像はそこまで外れていない。

「小野くん、ニュースキュレーションアプリのプロジェクトの方なんだけど、たまには様子を見てあげてね。」

「分かりました。」

「それじゃ、二人共、留守を頼むよ。」

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