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人狼族に事情聴取

『謝罪はいい。俺よりギンタにだ。それより持っている情報の交換と整理だ。そのあたりの担当のエージェントは?』

『私です。パウルと申します。』

 人狼族らしく身体はがっちりしているが、知的な顔立ちをしている。

 若くて、知的な爽やか系で、それなりのマッチョだ。

 モテないわけがないな。

『まず、俺の方で把握した情報から話す。今回の襲撃者は人種と装備はグロニスク国内で海外から手に入れやすい物が使われている。特に魔法無効化装置については、その噂すら無かった物を投入してきていることから、可能性は高い。』

『魔法無効化装置然り、相当な規模の襲撃だったということですか。こちらには、事前情報は全くありませんでしたので、完全に不意打ちを食らった体です。』

『あと、北アメリカがその魔法無効化装置を回収に来た。お前たちだけでなく、襲撃者の情報も知っていたことになるな。』

 パウルは表情を変えていないが、どことなく落胆が見える。

『北アメリカとしては、俺達に干渉はしないが、監視はするとの事だった。今後、どう絡んでくるか分らん。』

『北アメリカですか。そちらにも探りは入れておきます。』

『それじゃ、二人の遺体を送る手続を頼む。最後の挨拶だけはさせてくれ。』

『ありがとうございます。』

 その後、小野くんとダナに昨夜の別れてからの状況を詳しく話し、二人の人狼族の遺体をトリヴォニアに搬送する手続にかかってもらった。

 センサー役に誰か一人、人狼族を借りれば良かったかな、なんて思いながら、デスクに向かう。

『ハル。研究データをネット上に北アメリカにバレないように隠匿できないか?例えば暗号化したあと、断片化してwebサイトに分散して書き込むみたいな。』

『その分散先のurlは何処に保管するんだ。』

『お前に。』

『我がいなければ、引き出す事もできんぞ。』

『別にそれで良いよ。』

『それで、瘴気操作関係の技術の隠匿か。小野にはどう説明する。』

『どちらかに、何かあった時だけでいい。ダナも入れて話をする。』

『とりあえず、直前まで仕込んでおくか。』

『止めておくのか。』

『半分は小野くんのモンだからな。』

『その律儀さが命取りに、なるかも知れんぞ。』

『分かってるが、要領良く生きる気は無い。格好悪い。』

『そんな格好良さは要らん。』

『四十数年生きてきて、今更、生き方は変えられんわ。』


 会社の戸締まりをしてから、街に出る。

 水没した携帯電話の買い替えに向かうためだ。

 まだ、日本国内ではSIMフリー機種は出回ってない。

 携帯電話ショップで、機種代は実費負担で買っておく。

 いつまで使えるか分からないので、後から面倒な手続が無い方が良い。

 ネットカフェの個室にカップラーメンを持ち込んで、何の電源も入れず、リクライニングチェアに身体を預け、一旦、頭を空にする。

 未だに、北アメリカの動きがしっくりこない。

 環境を変えて独りで考え考える時間が欲しかったのだ。

 ギンタを迎えに行く時間まで、ゆっくり過ごす事にした。


 ギンタを迎えに学校の近くまで車で乗り付ける。

 同級生と校門から出てくるギンタをすぐに見つけられた。

「迎えに来た。」

「車は?」

「向こうだ。」

「会社に行く前に、ちょっとお願いしたい事からあるんだが。」

「車の中で聞く。」

「そうだな。ここじゃあな。」

 校門前で親子で話をしているのも、意外と目立つことに気が付いた。

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