北アメリカと接触
家に戻ると、制服警官達が進入禁止のテープを張っていた。
車を置き、家に入ろうとすると、ギンタが飛びだしてきた。
「何で無茶をする。」
「悔しくてな。人が死ぬのに慣れてないんだ。心配させて済まなかった。」
俺自身は拳を振るう人間だ。
自分自身に対してはその覚悟はある。
だが、自分以外の人間の死となると、意外と受け止められないものだったのだ。
今、冷静に考えるなら彼らも同じ覚悟を持っていたのではないだろうか。
小野くんとダナも中から顔を覗かせてきた。
「早速、状況の確認をしていきたいんだけど、北アメリカの介入は聞いてる?」
「はい。公安局の方から説明を聞きました。」
小野くんと話をしたのか。
「しかし、この荒れ具合は落ち着かんな。場所を変えるか。ちょっとシャワーを浴びて着替えてくる。」
「ギンタも何日か分の服をバックに詰めておいてくれ。」
「ランドセルは?」
「この状態だから、学校は休んでもいいんじゃないか。」
「明日は行く。」
「分かった。すぐに要るものだけ、持っていけばいいよ。前みたいに近くにホテルをとるから。必要になったら取りに来れば良いし。」
「分かった。」
「ホテルで大丈夫でしょうか。」
「会社のセキュリティも魅力的だが、今日の今日で新たな組織からの襲撃もないだろう。」
「まぁ、公安局もCIAも近くにいますしね。」
「とりあえず、二人はもう帰って、明日、会社で会おう。ダナ、バルタファングの連中も会社に呼んでおいてくれ。」
「分かりました。」
シャワーを出て着替えると、ギンタはもう支度ができていた。
部屋をよく見ると、音響閃光弾は普通に何かを爆発させたような被害がでていた。
暫く馬鹿になっていた鼻が戻ったのか、硝煙の匂いが鼻を突く。
「火薬臭いな。」
「何で、今頃。」
ギンタが荷物を玄関に並べている。
これ以上、何者かの襲撃を受け続けるるのであれば、集合住宅だと周囲に迷惑をかけ続けるな。
「さて、もしかしたら、引っ越しを考えないといけないかもな。」
「学校は?」
「変わらないところが良いな。とりあえず、出るか。」
車のシートは濡れているため、バスタオルを敷いてから運転席に座る。
「あれ?結構、服が破れてるな。」
「ダナが安全ピンで留めてくれた。黒竜になるときに失敗した。」
そういえば、黒竜の姿から一の姿に戻るとき、服はどうしていたのだろう。
「今更聞くのもどうかと思うんだが、いつも、黒竜の姿になるとき、洋服はどうしてるの。」
「脱いでる。魔法で服を割って脱ぐ。着る時も同じ。服に先に魔法をかけておいて、マナをしっかり馴染ませておかないといけない。」
割って脱ぐのか。
意外な答えが帰ってきたな。
「そうだったのか。今更ながら驚いたな。」
「その昔、鎧の脱着をするために開発された魔法。ヨハンの家に伝わっていた。」
「そっか、ヨハンのやつにも会ってたか。」
「うん。」
ホテルにチェックインして、ギンタを着替えさせ、フロントで電話を借りる。
「もしもし、梅田さんかい。」
『ああ。』
「今から、アメリカさんと飯を食いながら話をしてくるよ。帰りは9時頃かな。用事があるなら、ラウンジで待っててくれ。」
『分かったよ。』
ホテルの場所と部屋番号を伝える。
「ギンタ、寿司で良いか?」
「トロ食べる。」
そうきたか。
「良いぞ。」
「なら、行く。」
寿司屋に予約を入れてから、トールマンに場所を教えて、歩いて向かった。




