新事業展開2
「次に行きましょう。ニュースキュレーションアプリの方はどんな体制で行くんすか。」
小森くんが仕切り始める。
「RSSとか使っちゃいます?」
「ああ、受信からウチからの配信を考えているのか。まだ、フォーマットがこれから変更されるだろうし、現時点では使いにくい。それに必要なのは本文だし、もうあと数年すれば必要ないだろうが、まだペーパーからの読み出しも要る。軌道に乗るまでは俺が中心になって回そうと思ってる。携帯アプリの開発になると、全く別分野になるし。俺も多少は書けるけど、新たに開発チームを作らないとな。コンテンツは今のチームを直接使う。基本的にすることは同じだし。けど、新聞社と正式契約して、記事配信する。」
「もしかして、有料っすか?」
「ああ、暫くはな。携帯電話のブラウザじゃ、情報量も少ないし、キュレーションよりも記事配信の性格を全面に押していく。パケットが高額になるから、しばらくはビジネスマン向けにして、携帯電話の大画面化とパケット通信料の定額制の普及までは、月額料金だな。」
「なるほど、オッサンが満員電車でもケータイで新聞が読めるって事っすね。」
「そんなところだな。」
現時点では、携帯端末に通信機能が付いたものが数機種で回っているが、まだまだ普及には程遠い。
俺も昔はWindowsフォンを使っていたが、当時は変わり者として見られたものだ。
携帯端末、音楽プレーヤー、携帯電話を常時持ち歩いていたので、一つで済ませることができるWindowsフォンにはすぐに飛びついた。
ユーザ数を考えるとスマートフォン普及するまでは、広告料で収益を出すのは難しいだろう。
ただし、ビジネスマン向けの書籍や新聞サービスは、それなりに需要が見込めると思われる。
「売れますか?」
小森くんが心配そうに聞いてくる。
「いままでビジネスマン向けのそういったサービスは需要はあったが、パケット通信などのインフラの整備が進んでいなくて、キオスクとか店舗に行かないといけない不便さがあったからコケている。パケット通信を使えるなら、パケット代に見合うサービスなら、需要は充分にあるだろう。でも、ネット自体の情報量も限られているうえ、携帯ブラウザじゃ、使いにくいしパケット料も馬鹿にならん。アプリ開発は必須だな。」
「なるほど、ウチとしてはちょっとお堅い分野への進出と言うわけっすね。」
「まぁ、そうなるけど、それも大画面機器が普及してくればすぐに存在価値を失う。その時にはちゃんと本業、キュレーションサイトに戻る。」
「次は、萩原さんのところなんだけど、ユーザ層の変化はあった?」
「まだですね。主婦層は増えてきていますが、OL層はまだ利用者自体が少ないのもありますし。」
「パケット通信の定額制がブレークスルーになる。主婦層、OL層、ギャル層に分けての展開をするか、どこかに特化するかなんだけど。」
「20から40代でしていきたいのは知ってるでしょ。」
「まあ、そうなんだけど、生き残りを考えないといけないし。ちゃんと、その層向けに機能の開発も準備はしてるよ。」
cookieによる嗜好分析、バイオリズム把握、体調管理、各種診断テスト、知識共有等のほか、医者カウンセラーによる相談室の設置など、各種機能の搭載を検討しているが、優先順位の設定や取捨選択も必要だろう。
「でも、実際の使い心地とか見てみないと分からないわね。」
「何なら俺がテストサイトで幾つかプロトタイプでも作ろうか。」
もしかしたら、誰かにさせるかも知れないけど。
今後は定期的に打ち合わせを行っていく事にする。
「最後の議題なんだが。社名を変更したいと思ってるんだ。新たな事業にも進出する事だし、今のままって訳にはいかないだろうし、丁度いい機会だろ。」
「今のまま、『じめ速』なんて締まらないわね。」
「なんかカッコいいのが良いッスね。」
俺からも幾つか候補を挙げておくが、最終的にこの三人で決めてもらおうと思い、次回の打ち合わせで決める事にした。




