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016. 街


「街には着いたが・・・・・・」


『こ、これは・・・・・・』


「ゴ、ゴブ・・・・・・」


 今自分たちは街の入り口にいる。ゲームを始めた途端草原の真ん中に送り込まれはしたが、この世界のことを全く知らないため特に行く当てなどもかった。送られた先が街が目視できる場所であったのは運が良かったのだろう。であれば情報と物資を得るために街を目指す――そう判断するのは当然だった。それに間違いはない・・・・・・はずだったのだが・・・・・・


「街、だな・・・・・・」


『ええ、街にたどり着きました・・・・・・』


 そう、自分たちは草原を進み街にたどり着いた。途中二匹のゴブリンが襲い掛かってくるという事態があったが、二匹まとめて焔鬼が火魔法で吹き飛ばした。当初襲い掛かってきたのが焔鬼と同じ種族のゴブリンであったため、自分たちは攻撃を躊躇していた。ひょっとして焔鬼の知り合いではないか、と。二匹のゴブリンがニタニタしながらゴブゴブ言うと、突然焔鬼が親の仇のごとく怒り狂い魔法で奴らを火達磨にしてしまった。まあ知り合いは知り合いだったらしいのだが、あまりいい関係ではなかったようだ。元々ゴブリンという種族は魔法攻撃には弱いらしい。そのため覚えたての焔鬼の火魔法でも致命傷だったらしく、あっさりと光の粒子となり消滅してしまった。


 ちなみにゴブリン達を倒したことで焔鬼と彼の火魔法は共にLv.2になった。


 そんなことがありつつ街までやってきたのだが・・・・・・


「人がいないな・・・・・・」


『ええ、『人は』いませんね・・・・・・』


 たどり着いた街に人が一人もいなかった。いや、街のいる口から見ているだけなのでもしかしたら隠れているだけなのかもしれないが。ただ街道には人の代わりに人間の骨格模型のような魔物が幾体も蠢いていた。煌星曰くスケルトンという魔物らしい。どいつもこいつも武器を持ち、我が物顔で街を徘徊している。ちなみに遠くから見えていた街の明かりはスピリットという人魂の魔物だった。


『海斗さん、どうします?私としてはこのまま引き返したいのですが・・・・・・。スケルトンたちは街から出ようとしませんけど、明らかに敵意のある感じでこちらを見てますよね?』


「確かに・・・・・・」


「ゴブ!ゴブ、ゴブブ!」


『焔鬼も『戻りましょう、ご主人様!』といっています』


「そう、だな・・・・・・」


 街の中に入ったら間違いなく戦闘になるだろう。こちらは三人、大してスケルトンは目視できるだけでも三十体以上はいる。ここは引き返すことにしよ―――





『―――マッ・・・・・・テ・・・イタ』


「ッ!?」


『・・・・・・ズット・・・・・・マッテ・・・イタ・・・ン・・・ダ』


 なんだ?頭に声が・・・・・・。煌星の念話―――じゃない。これは・・・・・・何だ?誰の声だ?誰が呼んでいる?


『か、海斗さん?』


「ゴ、ゴブ?」


 煌星と焔鬼が不安気に自分の顔を覗いている。違和感を感じ取ったのだろう。心配をかけて申し訳ないが、今はこの声だ。自分を呼ぶ声・・・・・・そう、街の中から呼びかけているように感じる。無視はできない。自分は行かなければいけない、あの声にこたえなければならないと、そう感じる。


「・・・・・・街に入る」


『ええっ!?』


「ゴブ!?」









『・・・・・・・ハヤ・・・ク・・・・・・キテ』



《クエスト【群がる狂骨の宴】を開始します》

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