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014. 小鬼の魔法使い


《ゴブリンのテイムに成功しました》

《テイムしたゴブリンに名前を付けて下さい》



「ううむ・・・。」


『?どうしました、海斗さん?』


「いや、天から『テイムに成功した』とか『名前を付けろ』とかいう声が聞こえてきてな。名前の入力画面も目の前に浮かんでいる」


『あれ?いつの間に【テイム】スキルを使ったんですか?』


「いや、使った覚えはないんだが・・・・・・自分の意志に関係なく勝手に発動するものなのか、【テイム】というスキルは?」


『いえ・・・そんなことはない・・・はずなんですが・・・・・・あれ?違うのかな?』


「事実勝手に発動しているしな。まあなぜ【テイム】が勝手に発動したかは一旦置いといて、このゴブリン君に名前を付けよう。というか彼――彼女かもしれないが――には元々名前があるんじゃないか?そうでないと色々不便だろう?」


『ああ・・・そういえばどうなんでしょうね?考えたこともなかったですが、言われてみれば名前がないとゴブリン同士でコミュニケーションをとるとき不便ですよね』


「煌星、ちょっとゴブリン君に名前を尋ねてみてくれないか?」


『わかりました。ゴブリン君、君に名前はあるの?』


「ゴブ?ゴブブ、ゴブゴーブ、ゴブゴブブ」


『・・・・・・ふむふむ・・・・・・へー・・・・・・そういう感じなんだ・・・・・・』


 当然だが自分には二人の会話の内容は分からない。


「・・・煌星、ゴブリン君はなんと?」


『ゴブリン君が言うには各個体に名前を付ける習慣はないそうです。このゴブリン君にも名前はありません。これはゴブリンに限ったことだけではなく、大抵のモンスターがそうらしいです。』


「それでは特定の個体を呼ぶ場合はどうしているんだ?」


『その場合は『一番背の高いやつ』とか『左利きのやつ』とか・・・『二番目に足の速いやつ』『棍棒を持ったやつ』『体から犬のフンの匂いがするやつ』といったふうに呼ぶそうです』


 ・・・・・・『体から犬のフンの匂いがするやつ』はいくらなんでもひどすぎるだろう。まごうことなき悪口だ。・・・いや、人間にとって犬のフンの匂いは悪臭だが、ゴブリンにとっては違うのかもしれない。そう信じよう。そうでないと悲しくなる。


「ちなみにそのゴブリン君は何て呼ばれてたんだ?」


『・・・・・・『役立たず』だそうです・・・・・・』


「ゴブ・・・・・・」


 ・・・・・・それはまた・・・・・・ずいぶんシンプルだな。シンプルな悪口だ。


「・・・・・・とにかくゴブリン君に名前を付けよう。ちゃんとした名前を」


『そうですね・・・・・・』


 さて、どんな名前にするか・・・・・・







「よし、お前の名前は『焔鬼』だ」


「ゴブ!」


『『わかりました、ご主人様!』と言っています』


 火魔法を使える鬼だから『焔鬼』と名付けた。少し単純だっただろうかとも思ったが、本人の了承も取れたので名前入力画面に入力、と。・・・・・・よし、完了。


《ゴブリンの名前は『焔鬼』でよろしいですか?》


 仲間になった焔鬼だが、せっかく魔法が使えるようになったので[MAG]のステータスが上がり火属性魔法の威力が上昇する《蛍火の杖》と、あと《初心者の靴》も渡しておこう。自分の使い古しだが裸足よりはマシなはずだ。後は服だな。腰に巻かれた汚れた布一枚ではさすがにかわいそうだ。自分の服ではサイズが合わないので、遠くに見える街に行って服を売っている店を探さなければ。

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