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784話 物騒な妄想

「よう。いいザマだな。犯罪者ども」


「ぐっ……」


 俺は王都騎士団の地下牢を訪れていた。

 そこには数十人の元盗賊たちが囚われている。

 王城から金貨1万枚を盗んだ黒狼団、スラムでそこそこの勢力を誇っていた白狼団、そして一般区域でひっそりと闇カジノを運営していた闇蛇団。

 それぞれ適度にバラけさせられて、閉じ込められている。


「俺様たちをこんなところに押し込めやがって……」


「お前ら、俺たちを舐めすぎだぜ」


「ぶっ殺してやる……」


 口々に悪態を吐いているが、彼らの表情はさほど明るくない。

 この地下牢には、魔道具の技術が応用されている。

 ちょっとやそっとの脱獄技術では突破は不可能である。

 リーダー格の面々に付けられている手錠や足枷には、特殊な魔力が宿っていて、一定以上の力を加えると爆発するようにできている。


 百歩譲って、拘束を解いて牢屋から脱出できたとしよう。

 ここは地下牢だ。

 出入り口は1つしかない。

 その出入り口は、当然騎士団の面々が待機している。

 長い拘束で弱った彼らでは、騎士団の面々を倒すことは不可能というわけだ。


(万が一、俺が拘束されたとしたら……。どうなるのだろうか?)


 俺は思わずそんなことを考える。

 ネルエラ陛下とは友好的な関係を築いているし、俺の功績を評価して平民から男爵にまで引き上げてくれている。

 しかも、ヤマト連邦の一件が終われば彼の娘であるベアトリクス第三王女と結婚することもあり得る。

 俺がサザリアナ王国の面々と敵対することは、一見あり得ないようにも思えるが……。


(俺にとっての第一優先事項は、俺自身。次に愛する妻たちに、その他のハーレムメンバー。慕ってくれる配下たち。そして、世界滅亡の危機の回避だ)


 それらと相反する場合は、サザリアナ王国と敵対する可能性がゼロとも言い切れない。

 例えば、ミッションで『サザリアナ王国王家に反旗を翻し、王位を簒奪せよ』というような指示が出たらどうだろうか?

 ミッション報酬次第だが、相当に悩むことになるだろう。


 王家という存在は強大で、反乱が失敗すれば俺や愛する妻たちを含め一族郎党皆殺しにされる可能性が高い。

 しかし同時に、ミッションなどという不可思議なものを出す超常の存在も無視できない。

 ミッションを放置してサザリアナ王国に忠誠を誓ったところで、最終的に世界が滅亡してしまえば意味がないからだ。


(転移魔法は……封じられているな。鉄格子ぐらいは、素手でも何とかなるか。廊下まで出れば、転移魔法が使えそうだが……)


 空間魔法レベル3で使用できるようになる転移魔法は、正確に言えば”転移魔法陣作成”だ。

 床や地面に魔法陣を描いて、任意の場所へ一瞬で移動することができる。

 特殊な建材を用いた上で魔法的な処理をすることで、転移魔法陣を描きにくい場所とすることができる。

 この地下牢の内部は、そういった処理がなされているようだ。


(まぁそもそも、俺を拘束した時点で、凄まじい量の魔道具で拘束されそうだ。考えるだけ無駄か……)


 目の前の牢屋内にいる盗賊の面々も、リーダーや幹部クラスは魔道具付きで拘束されているが、平メンバーはごく普通の手錠や足枷のみである。

 収容にあたり、各人の脱獄能力もある程度は勘案されているのだろう。

 俺がもし収容されることがあれば、ありったけの魔道具を装着させられるはずだ。


(となると、助けを待つしかないな……)


 ミティは半狂乱になって真っ先に突撃してきそうだ。

 アイリスは落ち着いて作戦を立てて、潜入を試みるかな?

 幽霊のゆーちゃんとも上手く協力するかもしれない。


 ユナは、王城に火矢を放って、ファイアードラゴンのドラちゃんとともに火祭りを起こしそうだ。

 マリアも手伝うかもな。

 空を飛べて、火魔法も使えるし。

 そのスキを付いて、超速のモニカ、鉄壁のニム、回復のサリエ、水魔法のリーゼロッテあたりで突撃してくる可能性が高い。


 蓮華は……どうだろう?

 通常の加護を付与しているし、俺に対する忠義は疑うべくもない。

 しかし彼女は、故郷のヤマト連邦にも守るべきものがあると言っていった。

 他国のイザコザには深く首を突っ込まないかもしれない。

 ヤマト連邦の件を片付けて、彼女も真の仲間になってほしいところだ。


 レインはどうかな?

 こちらは前向きに手伝ってくれそうだが、まだまだ戦闘能力が不足している。

 アイリスやニムの判断で、留守番を言い渡されるかもしれない。


 キリヤ、クリスティ、セバスなど、加護(小)メンバーはどうだろうか?

 加護(小)の付与にはかなりの忠義度が必要ではあるが、さすがに王家へ反旗を翻すほどではないかもしれない。

 俺の救出に動くミティやアイリスたちに同行することはないが、妨害もしないといったところだろうな。

 多少の武器供与や、あるいは素性がバレない範囲で雑魚の掃討ぐらいはしてくれる可能性はある。


(まぁ、現状では王家と敵対する意味も予定もないし、あれこれ考える必要はないか。そうなったらそうなったときだ)


 物騒な妄想はこのあたりで終えておこう。

 俺は改めて、前方に視線を向ける。


「ちっ。……なんだよ?」


「やんのか? コラ」


 盗賊の面々が凄んでくる。

 とりあえず、彼らと話をしてみることにしよう。

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