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510話 クリスティvsユキ

 ハイブリッジ家のトーナメントが行われている。


「さあ、いよいよ一回戦最後の試合です! ハイブリッジ家の主任警備員であるクリスティ選手対、Cランク冒険者のユキ選手です!」


 司会のネリーがそう叫ぶ。


「はっ。やっとあたいの出番かよ。待ちくたびれたぜ」


 クリスティがそんなことを言いながらステージに上がっていく。

 それに対して、対戦相手のユキが口を開く。


「……ボクも戦いたくてうずうずしてた。気合は十分……」


 いや、あまり気合が入っているようには見えないが。

 ユキは無表情だから、本心が分かりづらい。


「それでは、試合開始!!」


「はっ。先手必勝だぜ!」


 いきなり飛び掛かったクリスティ。

 軽快な動きである。

 彼女の得意戦法は武闘だ。

 アイリスによって日々鍛えられている。


「……」


 それを冷静に見つめるユキ。


「おらおらぁ!!」


 連続攻撃を仕掛けていくクリスティ。

 それに対しユキは全く動かず、その場に立ち尽くしている。

 腕によってガードはしているが、闘気を込めたクリスティの攻撃は強力だ。

 ダメージなしとはいかないだろう。


「おおっと! クリスティ選手の怒涛のラッシュだあぁ!! ユキ選手、防戦一方です!」


「はっ、こりゃあ余裕だぜ!」


 クリスティは更にギアを上げてきた。


「そろそろ決める!!」


 彼女が強烈な一撃で勝負を決めにいく。


「これでどうだあああっ!!!」


 ドゴォッンッッッッッッ!!!

 拳を突き出しながら飛び込んできたクリスティの顔面に、カウンターで放たれたユキの正拳突きが炸裂した。


「……グハッ!」


 そのまま仰向けに倒れる。


「クリスティ選手ダウン! カウントを取ります! 1……2……3……」


 ネリーがカウントしていく。

 だが、彼女が10カウントを終える前に、クリスティは立ち上がった。


「……ちっ! 油断しただけだ。まだまだやれるぜ!」


「……ずいぶんと頑丈なんだね。残念……」


 ユキがそうつぶやく。


「それにしても、防戦一方に見えたのは演技かよ。完全に騙されたぜ」


「……うん。あれはわざとだよ。油断したバカを一撃で倒すためのね……」


「ああん!? バカだと!? 言ってくれるじゃねーか!!」


「……事実を述べたまで。バカはバカでも、タフなバカだったね。なかなか骨が折れそう……」


「はっ。だまし討ちするような卑怯者に負けるかよ!」


「……別に卑怯じゃない。勝負は勝った方が勝ち……」


 ユキはなかなか達観した考えを持っているな。

 現実主義的だ。

 そういう考え方は嫌いじゃない。


「はっ。勝ちに拘る姿勢は認めてやるよ。最後に勝つのはあたいだけどな!!」


「……ボクも簡単に負けるつもりはない……!」


 2人が互いに駆け寄る。

 再び激しい攻防が始まった。


「オラァ!」


「……甘い……」


「はああぁっ!!」


「……せいっ……!!」


 お互いが一進一退の攻防を繰り広げている。


「これは凄いぞぉ!! 両者とも一歩も引かない、壮絶な打ち合いです!!」


 実況のネリーがそう叫ぶ。


「解説のお二方、この試合はどうなるでしょうか!?」


「そうですね。両者とも、武闘による戦いを得意としています。地力の差が勝敗を分けるでしょう」


「ふふん。あとは、奥の手をいつ使うかね。こうなった以上、二回戦のために温存している余裕はないはずよ。クリスティちゃんのあの技が……」


「それを言ったら、ユキさんのあの魔法にも注目ですよ」


「なるほど!! 解説ありがとうございました! さあ、そうこう言っている間に、ユキ選手が何か仕掛けようとしています!!」


 ネリーの言う通り、ユキの魔力が高まっている。


「……凍って。アイスレイン……!!」


 ユキが魔法を発動すると、ステージ上に氷の雨が降り注いだ。

 何かと思えば、中級の水魔法か。

 ミリオンズの面々の魔法と比べると、さほどのものではない。

 いやまあ、一般的には中級の魔法でも十分に強力なのだが。


「はっ。氷の粒なんざ、簡単に避けられるぜ!!」


 そう言いながら、飛んでくる氷を避けていくクリスティ。

 そのまま、ユキに殴りかかった。

 バキィッ!!


「手応えあり!! って、あれ?」


 クリスティが殴りつけたユキの体は、ボロボロになって崩れ落ちた。

 威力が高すぎて肉体を破壊した?

 いや違う、あれは……。


「……ボクを捉えたと思った? それはフェイク……」


 いつの間にかクリスティの背後に回っていたユキが、そうつぶやく。


「ちっ! 雪でできたデコイかよ!!」


「……これで終わり。ばいばい……」


 ユキの闘気を込めたパンチがクリスティを襲う。

 これは決まったか。

 俺はそう思ったが……。

 ヒュン!!

 超速でクリスティが攻撃を回避した。


「おらあ!!」


 そのままユキに攻撃を繰り出す。


「うぐっ!!」


 ユキは攻撃をモロに食らった。

 ステージ外に倒れ、起き上がってこない。

 実況のネリーがカウントを行っていく。


「……10カウント! 勝者、クリスティ選手!!」


 ネリーがそう宣言する。


「はあっ、はあっ……! な、何とか勝てたぜ」


 クリスティが息を切らせ、額から汗を流していた。

 少しして、ユキがフラフラと立ち上がった。


「……してやられたよ。その技はいったい……?」


「はっ。秘密だ! ……と言いてえところだが、ここまで戦った縁で教えてやるよ。これは『赤猫族獣化』だぜ」


「……獣化術の一種か。厄介な技だね。次に戦うときまでに対策しておこう……」


「望むところだぜ! 次もあたいが勝つ!!」


 クリスティがそう意気込む。

 さて。

 これで、一回戦は全て終了した。

 勝ち残っているのは、ミティ、ニム、キリヤ、蓮華、ヴィルナ、ハナ、ナオン、クリスティだ。

 二回戦にも期待させてもらおう。

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