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463話 リールバッハとの面談

 風呂を上がった。

 そして、ミリオンズのみんなと合流する。

 慰労会はこれにて終了だそうだ。

 各自が解散していく。

 俺たちミリオンズも街の宿屋に戻ろうかと思ったがーー。


「待ちたまえ、タカシ君。君たちには、この館に部屋を用意している」


 リールバッハがそう声を掛けてきた。


「え? それはありがたいですが……」


 伯爵家に泊まる機会などそうそうない。

 ここはリーゼロッテの実家だし、さらなる友好のためにも泊まることに意義はある。


「君と1対1で内密に話したいことがある。付いて来い。リーゼロッテは、他の皆を客室に案内しておけ」


「承知しましたわ。お父様」


 リーゼロッテの案内のもと、ミリオンズのみんなが館の奥に進んでいく。

 ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ。

 マリア、サリエ、蓮華、ティーナ、ドラちゃん。

 あとは千もいる。


 それに対して、俺はリールバッハに連れられて別室に向かう。

 とある部屋に着いた。

 応接室か。

 落ち着いた雰囲気がある。


「さて。まずは座りたまえ」


「は、はい」


 ちょっと緊張してきた。

 アヴァロン迷宮からの帰り道や、先ほどの慰労会の席では特に緊張していなかったのだが。

 彼は伯爵家当主。

 1対1で相対するとやはり威厳が違う。


「まずは……。アヴァロン迷宮では世話になったな。あの千とかいう女の闇魔法を察知できなかった我らのミスを、見事カバーしてくれた」


「いえ、リーゼロッテさんの意向に従っただけです。それに、すばらしい仲間たちの協力もありましたし」


 俺はそう謙遜しておく。


「うむ。驕り高ぶらないその精神や良し。今回の件は、ネルエラ陛下にも報告しておくぞ。我の失態を、ハイブリッジ騎士爵がカバーしてくれたとな」


「あ、ありがとうございます」


 伯爵からの報告があれば、ネルエラ陛下から俺に対する評価も上がるだろう。

 ベアトリクス第三王女からは告げ口みたいなことをされるかもしれないが、それを補って余りあるかもしれない。


「ごほん。……前置きはこれぐらいにして、本題に入らせてもらおう」


 リールバッハが佇まいを正し、こちらの目を真正面から見据える。

 アヴァロン迷宮での一件が本題ではないのか?


「本題と言いますと……」


「もちろん、君とリーゼロッテの関係のことだ。リーゼロッテは、君と結婚したい素振りを見せておる。結婚する方向性で問題ないのか?」


「ええっと……。確かに、そうなったらいいなという話はありました。しかし、ちゃんとしたプロポーズはしていませんが……」


「それは問題なかろう。むしろ、根回しの前にプロポーズを済ませておることのほうが問題だ」


 リールバッハがそう言う。

 確かに、貴族の娘と結婚するのであれば、そういう考え方になるか。

 モニカの場合は先にプロポーズして、父親のダリウスには事後報告をしただけだったが。

 そのあたりも違いにも気をつける必要がある。


「なるほど。そういうことでしたら、リーゼロッテさんとの結婚の話をこの場にてご承認いただきたく思います」


「うむ。この件は、我ら伯爵家でも話し合い済みだ。君は個人として抜群の戦闘能力を持ち、有能なパーティメンバーや配下を揃え、それでいて驕り高ぶらない。君のような者に巡り会えて、リーゼロッテは幸せだよ」


 べた褒めじゃないか。

 照れるね。


「つまり……?」


「君とリーゼロッテの結婚を認めよう。幸せにしてやってくれ。食い意地が張ったのんびり屋だが、優しい娘だ……」


「はい! 俺に任せてください!」


 俺は元気よくそう返事をする。


「いい返事だ。それで、結婚式をいつ挙げるかだが……」


「早いほうがいいでしょう。俺たちは近いうちにラーグの街に帰りますが、それまで挙げられれば……」


 リーゼロッテとしても、生まれ故郷で結婚式を挙げるほうが嬉しいだろう。


「それも悪くはないが……。こちらでもいろいろと情報を集めさせてもらった。君は、ハルク男爵家のサリエ嬢や、ハガ王国王女のマリア姫ともそういう話が持ち上がっておるそうじゃないか」


「ええ、それは確かにそうですが」


 サリエやマリアとの結婚話も、リーゼロッテと似たようなイメージだ。

 ふんわりと”そうなったらいいな”ぐらいの話はしているが、親御さんに相談するまでには至っていない。


「我らラスターレイン伯爵家が抜け駆けしたら、要らぬ軋轢を生む可能性がある。ここは、三家で足並みを揃えるために協議しておくつもりだ」


「なるほど……」


 やはり貴族や王家ともなると、そのあたりに気を配る必要があるのか。

 バルダインやハルク男爵が機嫌を損ねてリールバッハと対立する姿はあまり想像できないが、可能性としてはゼロではない。


「それに、付き合いは長いが結婚はしておらぬパーティメンバーが他にもおるだろう。ええと……」


「ニムとユナのことでしょうか?」


 リーゼロッテ、サリエ、マリアよりパーティメンバー歴が長く、かつ結婚していないのはその2人だ。


「おお、その2人だ。せっかくだし、その2人も加えて足並みを揃えるのも悪くないぞ。有望な新興貴族が、一度に5人もの花嫁を迎える。伯爵家、男爵家、他国の王家。それにラーグの街生まれの平民に、少数種族の村人。強力なコネクションを結ぶチャンスだ」


 ふむ。

 俺という新興貴族を通じて、今までになかった交流が生まれるメリットもあるのか。

 その発想はなかったな。


「わかりました。その方向で考えておきます」


 とりあえず、すぐにでもここルクアージュで結婚式を開くことはなくなった。

 近いうちにラーグの街に帰り、いろいろな用事を済ませつつゆっくり過ごすことになるだろう。

 その際に、結婚式の話も少しずつ詰めていくようなイメージだ。


 バルダインやハルク男爵への相談は必要だし、本人たちへのプロポーズも必要だ。

 いろいろとやることが多いが、がんばっていこう。

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