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1747話 タカシ様…?

「今、素顔を見せよう。……これでいいか?」


 そう言って仮面に手をかける――つもりだった。

 が、手元が狂ってしまった。


「っ!?」


 突然、豪傑の顔色が変わる。

 先ほどまでの柔和な空気が一瞬にして消し飛び、怒りに染まる。


「そ、”そこ”を見せろなんて言っていません! やはりあなたは変態ですね!? 戦闘中から疑わしいとは思っていたのです!!」


 怒声が轟く。

 空気が一気に緊迫する。


「ま、待て待て! 間違えただけだ!! その拳を収めてくれ!!」


 俺は慌てて叫ぶ。

 焦りで声が裏返る。

 完全に俺が悪い。

 言い訳の余地はない。


 俺が何をしたのか?

 全裸に仮面と炎という常識外れの格好で、その肝心の炎を消してしまったのだ。

 見た目はもう変質者そのものである。


 俺のマグナムは並の攻撃には耐えられる。

 だが、この怪力豪傑の拳が炸裂したら、さすがに洒落にならない。

 ここは全面謝罪で態勢を立て直す!


「……む? おい、どうした? チラチラ見て……」


「い、いえ。何でもありません」


「嘘つけ、絶対見てたぞ。ひょっとして、他人のアレを見るのは初めてなのか?」


「そんなことありません! ……見覚えのある形かと思ったのですが、元よりまじまじと見たことはありませんし、これだけでは判別できません……」


 なぜか視線を逸らしながらそう呟く豪傑。

 その態度に、逆にこちらが戸惑う。


「? 何の話だ?」


「な、何でもありません! 忘れてください!」


 語気が強くなる。

 あからさまに狼狽している。

 そこまで慌てる理由がわからない。


「分かった。忘れよう」


 ここは深追いしない方がいい。

 俺は素直に頷いた。

 よく分からないが、剛腕による局部破壊はなんとか回避できたらしい。


「と、とにかく、素顔を見せてください。なんだか妙な胸騒ぎがするのです」


 豪傑が急かす。

 今度こそ間違えないように、俺は慎重に仮面に手をかけた。


「ああ、分かった」


 俺はゆっくりと仮面を外す。


「っ!!」


 豪傑が息をのむ音が聞こえた。

 仮面越しに彼の瞳が見開かれ、まるで時間が止まったかのように俺を凝視する。

 その視線が刺さるほど鋭い。


「た、タカシ様……?」


「ん? 俺の名前をなぜ知って――」


「タカシ様っ! タカシ様ぁあああ!!!」


「うおっ!?」


 堰を切ったように叫ぶと、彼女は一気に距離を詰め、抱きついてきた。

 凄まじい怪力だが、どこか愛情のこもった加減がある。

 懐かしさすら感じさせる、圧倒的な熱量。


 なんだ?

 どういうことだ?

 なぜ、彼は俺の名を知っている?

 どうして『様』付けで呼んでいるんだ!?

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