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1746話 私の探し人に似ています

「お前はいい男だ。相手によっては、俺よりも先に口説く権利を与えてもいい。もちろん、無理やりは無しだ。それに、既に俺の女となっている者に手を出すことも許さない」


「……あなたという人の性格が分かってきましたよ」


 豪傑がため息をつく。

 その声には呆れ以上に、どこか安心したような色が滲んでいた。


 しかし、どうして呆れられているんだ?

 俺は本気で語っているのに。

 富、名声、権力、戦闘能力、美食などなど……。

 人が求めるものはたくさんある。

 だが、大元を辿ればそれらは『生物としての自己遺伝子の存続欲求』に由来するという一面がある。

 金があり、社会的地位が高く、強く、栄養状態が十分であれば、自ずと遺伝子を残しやすくなるからな。


 そういった欲望と比べて、生物として根源的な欲求にダイレクトに答えるものがある。

 それこそが、異性からの愛だ。

 男の俺や豪傑にとっては、美少女からの愛である。

 もちろん美女や美熟女もいいし、将来性を見越して美幼女もアリだ。

 あるいは、外見なんぞに拘らず、心根の優しい者や価値観の合う者を選ぶのも大いに結構である。


「美少女はいいぞ! 愛でてよし、眺めてよし、抱いてよしだ! 俺は美少女を愛している。お前も美少女を愛し、そして愛されているといい」


「はぁ……。何やら誤解があるようですが……」


 受けた豪傑が、重たいため息を吐いた。

 肩がわずかに落ちる。

 ついさっきまで、剣呑な空気を漂わせていた彼女の態度が、幾分和らいでいるのが分かる。

 まるで、相手の常識外れな言動に呆れたのか、それとも逆に安心したのか。

 どこか気の抜けたような、けれど親しみの兆しも垣間見える微妙な雰囲気だった。


「いいでしょう。あなたは、私の探し人に似ています。ひとときの借宿として、あなたに仕えてみるのも悪くありません」


 唐突な宣言。

 だがその声音には、確かな決意がにじんでいた。

 どこか寂しさを抱えるような瞳が、仮面越しにこちらを見据えている。

 その言葉が気まぐれなどではないことを、俺は直感で理解した。


「おお! そうか!!」


 思わず歓喜が声となって漏れ、無意識のうちに手を叩いていた。

 これほどの強者が味方になるのであれば、近麗地方の平定など、風を切るように容易なことだ。

 心が弾む。


「ですが、その前に」


 その一言が、勢いづいた俺の思考に急ブレーキをかけた。


「ん?」


「あなたの素顔を見せてください。顔を知らない相手に仕えろと言われても、無理があります」


 確かに、と俺はすぐに頷いた。

 相手に信を置かせるには、自らをさらけ出す必要があるのは当然だ。

 豪傑の顔も仮面で隠されてはいるが、まずは俺から仮面を外すのが礼儀というものだろう。

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