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1744話 六王断

 マズい!

 来る――


 だが、すぐに冷静さが戻る。

 大丈夫だ。

 避けようとしたのは、あくまで保険。

 奴の拳は何度も受けてきた。

 愚直なまでに直線的な攻撃。

 わずかばかりのダメージは受けるかもしれないが、大ダメージを受けることはあり得な――


「【六王断ろくおうだん】!!!」


 その瞬間、世界が反転したかのようだった。


「ぐはっ!」


 腹の奥から、鈍く重たい痛みが這い上がってくる。

 視界が跳ね、地面が近づいてくる。

 俺の『散り桜』の結界を貫通し、肉を、骨を、魂を打ち抜くような一撃が、直撃した。


「私を見くびり過ぎです。白夜湖を支配していた『六王獣』……私は奴らから学び、六属性を体得しています」


 声の主は悠然としていた。

 激しい攻撃の割には乱れていない呼吸、揺るがぬ言葉。

 まるで、今の攻撃がほんの序章であるかのような余裕が、彼の背後に影のように立ち込めていた。


「六属性……だと?」


 掠れる声で問い返す。

 喉の奥が焼けつくように痛む。


「ええ。残念ながら私には妖術の適性がないようで、個別の攻撃妖術は使えません。しかし、闘気に混ぜ合わせて打撃に練り込むことはできるのです」


「なるほど。それで、この威力か……!!」


 六属性。

 具体的にどれが含まれているのか、今は分からない。

 だが、思い当たる属性はいくつかある。

 火、水、風、土、雷が定番か。

 さらに光、影、植物、重力、聖、闇あたりが含まれている可能性もある。


 俺の『散り桜』は物理攻撃を無効化するが、魔法や妖術には無力だ。

 特に、火属性には弱い。

 もしも、六種の中に火の性質が含まれていたなら――。

 彼の怪力と相まって、その攻撃力は凄まじいものとなるだろう。


「あなたの手札は、把握しました。降参するなら今のうちです」


 静かに、だが冷酷に、豪傑は告げた。

 その口調には一切の揺らぎがない。

 計算された勝利の余裕。


「するわけないだろ。……だが、そうだな。お前を侮っていたよ。謝罪しよう」


 素直に認めるのは、敗北ではない。

 誤算を認め、次に活かす。

 それが俺の流儀だ。


 10分間。

 最初に定めた戦いの制限時間は、とうに過ぎている。

 油断と過信が生んだ代償は、肉体にも精神にも刻まれた。


「俺はもう、お前を格下とは思わねぇ。全力で叩き潰させてもらう……!!」


「こっちの台詞です! ――【ホーク・ドライブ】!!」


 気迫がぶつかり合う。

 次の瞬間、轟音と共に、豪傑が巨石を手にし、怒涛の如く天に投げた。

 厄介な時間差攻撃だ。


「「うおおおおおぉっ!!!」」


 裂ける空気、飛び交う岩石。

 世界がぶつかり合う音が響き渡る。

 生き残るには、もはや一切の容赦を捨てるしかない。

 こうして、戦いは熾烈を極めていくのだった――。

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