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1740話 こっちの方が効率的だろう!

「いつまで続ける気だ?」


 俺が問うても、豪傑の眼には炎が燃えていた。

 止まる気配など微塵もない。


「あなたが! 倒れるまでです!! 【ジャガー・メテオ】!!!」


 鋭い咆哮。

 空中に閃光が走る。

 無数の石が、豪傑の手から絶え間なく放たれてくる。


 その剛腕から繰り出される一投一投が、雷鳴のように大地を揺らした。

 砲弾のように重く、鋭い。

 石の出どころは、豪傑の懐か。

 妖具が石を次々と供給しているらしい。

 その底は見えず、無限にも思えた。


 このまま相手の技を受け切るのも悪くない。

 だが、俺にはあらかじめ提示した『10分』という制限がある。

 その時が近づきつつある今、俺は腹を括った。

 ここで、俺という存在の「格」の違いを、思い知らせるとしよう。


「石で攻撃するのはお前の専売特許ではないぞ? ――【石弾生成】」


 その言葉とともに、俺の周囲の空間が震え、重力を無視したように石が出現する。

 浮かぶ石たちは、まるで意思を持つように俺を中心に旋回し、構えを取る。


「くく……。お前の技とは、少し違うか?」


「なっ……」


「こっちの方が効率的だろう! 【石弾乱射】ぁ!!」


 解き放たれたのは、まさに石の暴風だった。

 空気が裂け、石弾が唸りを上げながら突き進む。

 その数、勢い、精度――単なる模倣ではない。

 完全な上位互換。

 腕力や妖具で構成された技より、圧倒的な魔力から繰り出される魔法の方が強い。

 それが道理だ。

 俺を中心にした円陣から発射されるそれらは、機関銃の連射の如く、隙間を与えず豪傑に襲いかかった。


「おお……。兄貴、容赦ねぇな……!!」


 耳に届いたのは、流華の声。

 彼の声援が胸を打つ。

 鼓舞される。

 まるで彼の言葉が背中を押してくれるようだった。


「このまま押し切ってやる! ……む?」


 石弾は確かに命中していた。

 直撃しているはずだった。

 だが、豪傑は止まらない。

 ダメージを無視して前進してくる。

 常識を超えた耐久。

 筋肉や闘気がダメージを低減させているのか?


「まだまだ! 【ライノ・ホームラン】!!」


 叫びと共に放たれたのは、明らかに規格外の一撃。

 巨大なハンマーが、横一文字に振るわれる。

 大地が風圧で裂け、砂塵が巻き上がった。


「そんな大振りの攻撃、この俺に当たるはずが――うおっ!?」


 回避したつもりだった。

 距離を取ったはずだった。

 しかし――豪傑の動きは想定外だった。

 一回転。

 まるで曲芸のような体捌きで、続けざまにハンマーを投擲してきた。


 ……ん?

 ホームラン?

 豪傑の技名が引っかかった。

 それは確か、地球の野球用語だ。

 違和感がある。

 ここはヤマト連邦だ。

 なぜ、ホームランなどという言葉が豪傑の技名に含まれている?


 俺には、『異世界言語』のチートスキルがある。

 だから勝手に意訳された――だけ?

 ヤマト連邦のどこかに、野球に似たスポーツが実は存在している?

 本当に?

 本当にそれだけか?

 何か……何か、もっと重大な……俺は、何かを――


 ズキッ!!

 激痛が頭を貫いた。

 思考が千切れる。

 全身が痺れ、視界が揺れる。


「うっ……!!」


 回避が遅れる。

 妖術『散り桜』の制御も不安定になる。

 投擲されたハンマーが俺の肩をかすめ、その衝撃でバランスを崩した。

 地面に背を打ち、仰向けに倒れる。


「オ・オ・ザ・ル!! メリケン!!!」


 掛け声とともに飛び乗ってくる豪傑。

 マウントポジションから振り下ろされる拳は、まさに必殺。

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