表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1673/1845

1642話 守り人【蓮華side】

「もう一度言おう。止まりたまえ」


 金髪碧眼の美少年が、蓮華に向かって静かに告げた。

 その細身の体は、まるで風に揺れる柳のようにしなやかだが、その姿勢には確かな覚悟が宿っていた。

 彼は両腕を広げ、背後に隠れた何かを守るように立ちはだかっている。


「ぬぅ……。お主は?」


 蓮華が目を細め、相手の様子を窺う。

 剣士としての直感が、この美少年がただ者ではないことを告げていた。


「名乗るほどの者ではない。ただ、君にこれ以上進まれると困る。それを伝えに来ただけさ」


 美少年の目は鋭く、けれどその口調にはどこか冷静さが漂っていた。


「そう言われても困るでござる。東へ向かうには、この道が最短故」


「……ほう?」


 美少年の瞳がわずかに揺れた。

 彼はあごに手を当て、しばし考え込むような素振りを見せる。


「君の目的は純粋に、東へ向かうことだけなのか?」


「然り」


「つまり、結界妖術を破ってここまで来たのは偶然だと言うわけだね」


「結界……?」


 蓮華は小首をかしげた。

 その仕草に、美少年は何かを察したかのように目を細める。


「……まさか、君、結界の存在にすら気づいていなかったのかい?」


「ふむ。言われてみれば、何か妙な感覚があったような気もするでござるが」


「そうか。つまり君には、結界妖術を無効化する何らかの才能が備わっているということか」


 美少年はどこか納得したように頷いた。

 しかし、その理解は正確ではない。


 蓮華は結界妖術の無効化に特化しているわけではない。

 タカシに与えられた加護やステータス操作の恩恵により、ただ圧倒的な実力を持っているだけである。

 外敵の侵入を防ぐ結界妖術も、はるか格上に対しては意味をなさない。


「まぁ、理由はどうでもいい。問題は、ここから先だ」


 美少年は再び手を広げ、蓮華の進路を遮った。


「里への害意がないことは分かった。しかし、それでも君を通すわけにはいかない」


「む……。どうしてでござるか?」


「僕は守り人だ。隠れ里の存在を守り続ける。それが僕の役目だからさ。君のような部外者を里に入れるわけにはいかない」


「ふむ……。しかし、拙者も引くわけにはいかぬでござる。少しでも早く、仲間たちと合流せねばならぬゆえ」


「……仕方ない。ならば、力尽くで止めさせてもらおうか」


 美少年が身構えた。

 その動作は洗練されており、ただ者ではないことを示していた。

 蓮華は目を細め、静かに刀に手をかける。


「ふむ。ならば拙者も覚悟を決めねばならぬでござるな」


 静寂が辺りを包む中、二人の間に緊張が張り詰める。

 誰もが息を呑むような刹那の攻防が幕を開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ