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1626話 メッキ

「さぁ、答えろ。俺に従うか、逆らって死ぬか」


「く……っ!」


 景春は歯ぎしりをするが、何も言い返してこない。

 どうやら、完全にビビっているようだな。

 まぁ『生首』を目にしたので無理もないが……。


「どうした? 答えられんか?」


「う、うるさい! 余に指図するな!」


 景春が叫ぶ。

 明らかに恐怖心が強まってきている。

 だが、まだ足りない。

 いまだに一人称が『余』のままだ。

 自分が藩主であるかのように振る舞い続けている。


「残念、時間切れだ。お前は未来は決まった。幽蓮のように晒し首にしてやろう」


「ま、待て! 余は……」


 俺の言葉を受けて、景春が何か言おうとした。

 しかし……


「おい、そいつを拘束しろ。過去の身分に囚われた反逆者だ。遠慮はいらん」


「「はっ!」」


 俺の命令に従い、俺に恭順している家臣団の一部が動いた。

 その中には、桜花七侍も含まれている。


「景春様、お覚悟を」


「御免!」


「な、何をする! 金剛、夜叉丸! 放せっ!」


 景春は元家臣たちに押さえつけられながら叫ぶ。

 しかし、その叫びに力はない。

 心が折れつつあるようだ。


「景春様……」


「おお、樹影!! 余を助けよ!!」


「貴方を見損ないました。この上は潔く……」


「ま、待てっ! 待ってくれ!!」


 景春は必死に叫ぶが、樹影は取り合わない。

 樹影は前藩主の時代から桜花七侍を務めていた。

 景春の右腕だ。

 そんな彼女にさえ見限られた今、景春は孤立無援だ。


「景春様、みっともない姿をお見せにならぬよう……」


「う……っ!」


 樹影を含めた元家臣たちが、景春の手足をヒモで結んで拘束する。

 そして、目隠しをした。

 動けない状態で視界までふさがれた景春は、いよいよ恐怖心を強めていく。


「や、やめろ! 放せっ! 余を誰だと思っている!? 桜花景春だぞっ!」


「「……」」


 景春は叫ぶが、もはや誰も相手にしない。

 事前の根回しは済んでいる。


「樹影――いや、叔母上! 余を見殺しにするおつもりですか!? 余は血統妖術を受け継いだ正当なる後継者ですよ! 桜花藩はどうなるのです!?」


 景春が叫ぶ。

 そろそろ藩主としてのメッキが剥がれてきたか?

 藩主として配下に命じるのではなく、血の繋がりに訴えかけている。

 それに、樹影への言葉遣いが丁寧語になった。


「景春様……。貴方は……」


 樹影の声が震える。

 どうやら、景春への感情が頂点に達しつつあるらしい。

 事前の根回しは済んでいるとはいえ、最も怪しいのはやはり樹影か。

 このまま自由に会話させるのは危険だな。


「それではこれより、大戦犯である桜花景春の罪を裁定していく。景春よ、言い訳があるなら言ってみるがいい」


 俺は景春と樹影の会話を遮るように宣言する。

 さぁ、仕上げに入っていこう。

 成功すればいいのだが……。

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