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1604話 現状ステータス 流華

「よし、流華。次はお前の番だ」


「待ってたぜ、兄貴!」


 俺に指名された流華が、嬉しそうな声を上げる。

 俺たちは、ステータスを事前に記載しておいた紙を共に見た。

 そこにはこう書かれている。



レベル10、朝霧流華あさぎりるか

種族:ヒューマン

身分:平民

役割:桜刃三戦姫

職業:忍者見習い

ランク:ー


武器:苦無くない

防具:村人の服


HP:74(57+17)

MP:43(33+10)

腕力:40(31+9)

脚力:47(36+11)

体力:43(33+10)

器用:43(33+10)

魔力:43(33+10)


残りスキルポイント:60

スキル:

忍術レベル2

窃盗術レベル2


称号:

タカシの加護を受けし者

桜花七侍撃破者

桜刃三戦姫



 流華の初期レベルは10。

 紅葉よりも1つだけ高い。

 鍛錬などをする余裕がなかったのは紅葉と同様だろうが、流華の場合はある意味で毎日が実戦だった。

 なにせ、スリとして生きていたのだから。

 彼は多くの修羅場を潜り抜けてきた。

 その成果……と言っていいのかは分からないが、彼は紅葉よりも初期レベルが1つ高く、そして『窃盗術レベル2』を持っている。


「流華、一応聞いておくが……」


「何だよ、兄貴?」


「得意分野を伸ばすとは言っても、『窃盗術』は上げないよな?」


 流華は、既に罪を償っている。

 スリの被害者たちに謝罪と賠償も済ませた。

 もう犯罪行為に手を染める必要はないのだ。


「は? 何言ってんだよ、兄貴?」


「ん?」


「もちろん上げるぜ! これからも機会があれば盗んでやるからな!!」


「…………」


 俺は絶句した。

 てっきり、彼は心を入れ替えて真っ当に生きるのだと思っていた。

 しかし、違った。

 彼は盗むことをやめられないらしい。


「流華、尻を出せ」


「え? な、なんでだよ?」


「なんでもだ」


 俺の有無を言わせぬ口調に、流華が慌てて従う。

 ……ペシンッ!!


「痛ぇ!」


 俺は流華の尻を叩いた。

 もちろん、手加減はしている。

 だが、それでも彼は涙目だ。


「な、何すんだよ! 兄貴!!」


「これはお前のためなんだ。分かってくれ」


「え……? 俺のため――ひぃん!?」


 俺は流華の尻を再び叩く。

 今度は、さっきよりも強めに。


「や、やめっ! 兄貴!!」


「まだまだぁっ!!」


「やっ、やめろぉ!!」


 俺は流華の尻を何度も叩いた。

 何度も何度も叩いてやった。

 なんだか楽しい。

 野郎の尻なんか叩いても楽しくもなんともないと思っていたが、これはなかなか癖になるかもしれない。


「ん? どうした、流華?」


「んん……。はぁ、はぁ……」


 流華の異変を見て、俺は手を止める。

 彼は顔を真っ赤にして、息を荒げていた。

 ……いかんな。

 ちょっとやり過ぎてしまったらしい。

 顔を真っ赤にするほど怒り、息を荒げるほど苦しんでいたとは。


「悪かった、流華」


 俺は深々と頭を下げる。

 途中から、自分の楽しさを理由に彼の尻を叩いてしまった。

 これは、彼からの信頼を裏切る最低な行為だ。


「はぁ、はぁ……。な、何がだよ?」


「お前のためだと言いながら、ちょっとやり過ぎた。反省している」


「あ、兄貴が謝ることなんかねぇぜ! そりゃ、どうして叩かれたのかはよく分かってねぇけどよ……その、兄貴に尻を叩かれること自体は嫌じゃないし……」


 流華がボソボソと何かを言っている。

 最後の方の言葉は、よく聞き取れなかった。


「え? 何だって?」


「な、何でもねぇよ! 俺のスキルをどうやって強化していくかって話に戻ろうぜ!」


 流華が強引に話題を変えた。

 まぁいい。

 今は彼のスキル構成を考える方が先だ。

 まず、彼の考えを聞いてみよう。

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