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1577話 千本花火

「やっぱり記憶は取り戻したいな……。そのためにはミッションだが……」


 俺は桜花城最上階の天守閣で、ステータス画面に視線を向ける。

 記憶喪失のため、ミッションがどういう意味を持つのか詳しいことは分からない。

 だが、これが特殊なものであることぐらいは分かる。

 ならば、ミッションを達成していくことで記憶を取り戻すヒントを得られる可能性はあるだろう。



ミッション

桜花城を攻め落とし、支配しよう

報酬:加護(大)の解放

   スキルポイント10



「……ん? まだ未達成扱いか……」


 藩主景春を撃破し、桜花七侍を始めとする主要戦力も概ね壊滅させた。

 それでもミッションは未達成らしい。


「やはり、勝利宣言は必要ってことだよな」


 何をもって『攻め落とした』『支配した』と言えるのか?

 かなり微妙なところだ。

 しかし、人知れず桜花城内部を壊滅状態に追い込んだだけでは不十分だということには納得できる。

 一般民衆に知らしめてこそ、本当の勝利と言えるのだろう。


「となると……やはり、あそこか」


 俺は天守閣のベランダ的な場所から身を乗り出し、桜花城で最も高い場所を確認する。

 当たり前だが、居住空間としてはこの天守閣内部が最も高い場所にある。

 だが、この天守閣にはもちろん屋根がある。

 住む場所ではないし、普通の人ならば落下が怖くてあんな場所に上ることはできない。

 だが、俺ならば……


「よっと」


 俺は重力魔法を発動し、ベランダ的な場所から天守閣の屋根上へと移動した。

 桜花城周辺は重力魔法を阻害する特殊な結界があるのだが、これぐらいは可能だ。

 それに、俺が桜花城を引っ掻き回した影響か、その結界の効力が少しばかり弱まっているような感じもある。


「好都合だ。これならば、勝利宣言をさらに盛り上げる演出ができる。だが、まずは……」


 俺はそう呟きつつ、屋根から城下町を見下ろす。

 繰り返しになるが、ここは城下町で最も高い場所だ。

 全てが見渡せる。

 逆に言えば、城下町のどこからでも俺を視認できる。


「――燃え上がれ、千の炎よ! 空を裂き、数多の光で全てを包め! 【千本花火】!!」


 俺は真上に向けて、火魔法を放つ。

 もちろん、ただの火魔法ではない。

 ド派手な火魔法だ。

 千の炎弾が打ち上がり、空を舞う。


「な、なんだ!?」


「あれは……!?」


「きれい……」


 城下町に暮らす民衆たちが空を見上げる。

 そして、彼らは見た。

 空を埋め尽くさんばかりの千の炎弾を。

 桜花城の天守閣に佇む、謎の人影を。


「諸君! よく聞け!!」


 俺は大声で叫ぶ。

 声量を直接的に増強する類のスキルは取得していないのだが、各種スキルの副次的な恩恵もあり、俺はかなり大きな声を出せる。


「この俺こそが、桜花藩を統べる者! 諸君らの新たな支配者である!!」


「え? 藩主は桜花景春様じゃ……」


「急な増税とかもあったけど、いつかは父君のような名藩主になられるはず……」


 民衆がざわつく。

 そりゃそうだ。

 急にこんなことを言われてもわけが分からないだろう。


 百聞は一見にしかず。

 俺が桜花城を攻め落とした証拠を、彼らに披露してやるとするか。

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