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1574話 獰猛な竜

「まだまだ行くぞ! 【満開・桜槍閃】!!」


「【桜の舞】!」


「【八重桜】!」


 景春と双子の声が重なる。

 もうかなりの時間、彼らの攻撃を受け続けている。

 いつ階下の侍たちがここに駆けつけてきてもおかしくない。

 そうでなくとも、いずれは俺のMPが尽きる。

 魔法の源であるMPが尽きれば、いよいよ打つ手がなくなってくる……。


「もういい」


 俺の中で、何かがプツンと切れた。

 俺はその場に仁王立ちし、刀を鞘に収める。


「ははは! どうした!? ついに諦めたか――んぺっ!?」


 景春の言葉が途中で止まる。

 俺の闘気弾を顔に受けたからだ。

 彼には『散り桜』があるので、ダメージはないが……。


「俺も舐められたものだな。ガキども」


「「ひっ……!?」」


 俺の怒気を受け、双子が後ずさる。


「な、なんだ? 雰囲気が……」


 景春が戸惑う。

 俺は今、かなりイライラしている。

 殺気満々だ。

 実際に殺す気で攻撃しようとすれば体が動かなくなるのだが、殺気だけは隠せない。


「景春……お前にはいくつもの分岐点があった。最初に交渉した時、俺にお前の攻撃が通じないと知った時、俺の攻撃が『散り桜』を突破できると分かった時、幼い双子を戦闘に引きずり出された時……。そのどこでも、お前には降伏という選択肢があった。だが、お前は降伏を選ばなかった」


「な、何を言って……?」


「聞こう。お前……絶対に人を噛まないと確信できる獰猛な竜に会ったことはあるか?」


「え……」


「俺はないな……」


 俺はそう呟く。

 そして、景春の返事を待たず、殺意の波動と共に駆け寄っていく。


「なっ……!? う、うぅ……!?」


 景春が怯えた様子を見せる。

 だが、もう容赦はしない。


「武神流奥義――」


「ひっ……。や、やめ……」


「――【大震閃】」


 俺は刀を抜く。

 そして、彼を上半身と下半身の真っ二つにした。


「あ、あああああああぁっ!?」


「ねぇさまぁああああ!!」


 双子が悲鳴をあげる。

 強い殺気と共に、俺は景春を一刀両断にしたのだ。

 トラウマものの光景だろう。

 俺としては本当に殺しても良かったのだが、残念ながら……


「はぁ、はぁ……! くそっ! ば、馬鹿にしよって……!!」


 真っ二つにされた景春が、のそのそと起き上がる。

 そうなのだ。

 彼には血統妖術『散り桜』がある。

 魔力や闘気が不十分な斬撃は、無力化されてしまう。

 まぁ、だからこそ俺は自身の呪いに打ち勝って攻撃できたのだが。


「ね、ねぇさま?」


「よくぞご無事で!」


「うぅ……! 許さん……! 桜花家を侮ったこと、後悔させて……うぁっ……」


 景春が立ち上がる。

 しかし、すぐに体の一部が花びらとなってその場に崩れ落ちる。

 やはりそうか。

 強い精神的ダメージを与えれば、こうして『散り桜』の制御が不安定になるらしい。


「思い知ったか? 俺が本気なら、お前たち程度はいつでも殺せるんだ」


「「「ひっ……」」」


「確かに、俺には不殺の呪いがある。だが、それはいつ解けてもおかしくないものだと心得ろ。お前たちの態度次第では……桜花藩自体を滅ぼしてやってもいいんだぞ」


 俺は言う。

 景春と双子は強い恐怖のためか、気を失った。

 揃いも揃って股間部から液体を漏らしているし、意識を取り戻してももはや脅威ではあるまい。


 これでようやく勝利と言っていいだろう。

 あとは……階下から迫ってきている侍たちを蹴散らして、紅葉たちの無事を確認して……。

 仕上げに、城下町全体に向けて勝利宣言をするのもアリだな。

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