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1565話 自分を無敵とでも勘違いしていたか?

「さて、どうする? 俺にも物理攻撃は通じないんだ……。体が炎に変質しているからな」


 俺の問いに、景春は答えない。

 彼は槍が貫いた俺の肉体……風穴の開いた部分を呆然と眺めていた。


「そ、そんな馬鹿な……! 桜花家の血統妖術に匹敵する術を……流浪の侍が持っているなど……!!」


「まぁ、お前の『散り桜』も悪くないと言っておこう。だが、相手が悪かった」


 俺は言う。

 チート持ちの俺に勝てる奴なんて、そうそういない。


「くっ……! しかし、余の絶対的な防御力は健在だ! 刀でいくら斬ったところで……!?」


 景春が言いかけた瞬間、彼の右手から血しぶきが上がった。


「なっ……!?」


「斬れるんだよなぁ、それが」


 俺は言う。

 彼を斬ったのは、もちろん俺だ。

 ちょっと狙いがズレて、思ったよりも深く斬ってしまったが……。

 特に支障はない。


「ば、馬鹿な……!! 何故、桜化しない!?」


「魔力・闘気・妖力……。それらを適切に変質させ強化すれば、相手の武技を無視してダメージを与えることも可能なのさ」


「そ、そのようなことが……!?」


「できるんだなぁ……これが。ま、実力差や相性によって大きく左右されるけどな」


 景春の『散り桜』は、そこそこ程度には強力な術だ。

 1~3階にいた侍たちでは、天地がひっくり返っても破れないだろう。

 4階の『桜花四十九侍』でも厳しい。

 直属の『桜花七侍』の内、桜と相性のいい炎系妖気を操れる侍がいれば、あるいは突破できるかもしれないな。

 そして、俺ぐらいのレベルならば炎系に拘らなくとも打ち破れる。

 そんな感じだ。


「くっ!? う、うぅ……!」


 景春は気丈に振る舞うが、怯えが見て取れる。

 血統妖術にかなりの自信を持っていたらしいな。

 ま、その気持ちも分かるが。


「自分を無敵とでも勘違いしていたか? 上には上がいるんだ」


「う、うるさい!」


「虚勢をはるな。みっともないぞ」


「黙れ!!」


 景春が叫ぶ。

 彼は再び、桜の花びらを舞わせた。

 先ほどとは違い、数も規模も圧倒的に多い。

 加えて、懐の剣も抜いている。


「無駄だ。お前の妖術は俺に通じん。まして、付け焼き刃の剣術など効くものか」


「黙れ! 黙れ!! 余は……桜花藩の藩主、桜花景春なり! 民のため、臣下のため……! 外敵に屈するわけにはいかぬのだ!!」


 景春が叫ぶ。

 彼の周囲に舞っている花びらが、次々と俺に襲いかかってきた。


「うぉぉぉぉぉっ!!」


 景春は雄叫びをあげ、剣を振るった。

 その斬撃は、俺の体を捉える。

 しかしもちろん、それで俺がダメージを負うことはない。


「隙だらけだ」


「あぐっ!?」


 俺は景春の足を狙い、刀を振るう。

 だが……なにせ彼は暴れていた。

 狙いはズレてしまい、その刀は景春の腹に深々と突き刺さった。


「あーあ、変に動くから……」


「くそっ! この程度の傷……!!」


「……落ち着けって。その傷は致命傷だ。早く治療しないと死ぬぞ?」


「余は桜花藩を背負っているのだ……! 父が病に倒れ、妹たちはまだ幼い……! 余所者に桜花の地を任せるわけにはいかぬ! たとえ、この身が滅びようとも!!」


 景春が言う。

 ふむ……。

 責任感が人一倍強いようだな。

 あの悪政をしていた者と同一人物とは思えない。

 そんな彼を大人しくさせるには……。

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