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1548話 vs巨魁【紅葉side】

 流華や桔梗がそれぞれの相手と戦っている頃――。

 紅葉もまた、桜花七侍の一人と相対していた。


「……それで? くんとうを受けし力……とか言われても、馬鹿なおでにはよく分からないんだな」


「焦らずとも、今から見せてあげますよ」


 紅葉は構え、目の前の巨魁を睨み付ける。

 彼は武器らしいものは何も持っていない。

 徒手空拳で戦うつもりのようだ。

 そしてそれは、紅葉も同じように見えた。


「ふうぅ……」


「? どうした、子ども? 来ないならこっちから行くんだな。【大鬼拳】」


 紅葉が動かないのを見て、巨魁が攻撃を仕掛ける。

 巨体から繰り出される剛腕だ。

 それは、紅葉の目の前の地面をえぐった。


「うっ!? なんて威力……それに、身のこなしも速い……」


「ちゃんと鍛えているんだな。この大きな体は、ぜい肉じゃなくて筋肉なんだな。力こそぱわー、というやつなんだな」


「なるほど……。動けるデブということですか」


「な、なんだと!? おでは、筋肉を落とさないために敢えて痩せないだけなんだな!!」


 巨魁が激昂する。

 彼の煽り耐性は低いようだ。


「やれやれ……。食事を節制できず、相手の言葉を受け流す自制心もない……。こんなデブを構成員にするなんて、桜花七侍の質も落ちたものですね」


「なんだとぉ!?」


 紅葉の言葉を聞き、巨魁がさらに激昂する。

 彼はそのまま、紅葉に攻撃を仕掛けようとするが――


「おやおや、戦いの礼儀作法すら知らないのですか」


「た、戦いの礼儀作法……?」


 紅葉の言葉を受け、動きをピタリと止める。

 相手の話をちゃんと聞く、純朴な性格らしい。


「ええ、そうですよ。上位者は下位者の全力を受け止め、その上で叩き潰す。それが強者の務めというものでしょう?」


「確かにそうだけども……。真剣な勝負に、そんな悠長なことは……」


「そうですか。私のような弱い子ども相手にすら、正面勝負では勝てないと。そう言えば、さっきも先制攻撃をしてきましたね。桜花七侍ともあろう人が、実は自分に自信がない雑魚だったとは……」


 紅葉はにっこりと微笑み、巨魁を煽る。

 彼は、その煽りを受けて体を振るわせた。


「おでは雑魚じゃないんだな! おでは桜花七侍なんだ! 山村のおっとうとおっかあの自慢の息子なんだな!!」


「そうですか。では、私の全力攻撃を、どうぞ受け止めてください」


「ふんだ! おでは強いんだな。お前のような子どもに負けるわけがないんだな!」


 紅葉の挑発に乗り、巨魁はその場で仁王立ちする。

 彼はそのまま、両腕を大きく広げた。


「全力で受け止めてやるんだな! 子どもなんかの大技、怖くもなんともないんだな!」


「そうですか。では……」


 紅葉が全妖力を解放する。

 彼女はタカシに与えられた加護(小)の恩恵を受けている。

 各ステータスが2割向上している上、植物妖術もしっかりと練習し上達中だ。

 そうは言っても、まだまだ未熟で桜花七侍レベルに通用するほどではないのだが……。

 的確な挑発によって詠唱時間を稼げさえすれば……


「くらいなさい! 【吸魂花】!!」


「がっ!? な、なんだ、この蔦と花は……!?」


 巨魁の巨体が宙に浮く。

 中庭に生えていた草木が成長し、彼の体に絡みついたのだ。


「う、うっとおしいんだな……!!」


「ふふ。どうですか? 私の植物妖術は……」


「舐めるな、なんだな! おでの力なら、この程度……!!」


 巨魁は絡みつく蔦を振り払おうとする。

 しかし……


「お、おおぉ……!? 力が……抜けていく……?」


「無駄です。その草花は、あなたの闘気や妖力を吸い取って成長します。足掻けば足掻くほど、拘束力は強くなりますよ」


「ぐ……う……! あ、あえて痩せない系のおでがぁ……!!」


 巨魁の体が少しばかりしぼんでいく。

 植物によって闘気や妖力に加え、余計な脂肪までもが吸われているようだ。


「ふふ、どうやら私の勝ちみたいですね?」


「ぐ……! お、おおおおぉ……」


 巨魁がその場に崩れ落ちる。

 闘気や妖力を吸いつくされた彼は、そのまま深い眠りに落ちたのだった。

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