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1524話 さっきの続き

「桔梗、まずは医者に診てもらおう」


「え? 別に大丈夫だけど……」


「雷轟に乱暴されたのだろう? なら、診察してもらうべきだ」


 俺は告げる。

 起きてしまったことは仕方ない。

 過去を悔やんだり、罪人に罰を与えたりすることは後でもできる。

 最優先すべきは、被害者である桔梗のケアだ。


「乱暴って……。ただ、服を切り裂かれただけなんだけど……」


「えっ? でも、『ヤられた』って……」


「だから、それは無理やり服を切られただけで……。碓かに嫌だったけど、高志くんが助けてくれたし、もう気にしていないよ」


「なんだって!?」


 俺は驚愕する。

 何やら、言葉の問題で意思疎通に少しばかりの齟齬があったようだ。

 結局のところ、桔梗は誘拐され、服を切り刻まれたものの、そういう行為そのものは未遂に終わったらしい。


 いや、誘拐されてふんどしを奪われるというだけでも、年頃の少女にとってショッキングな出来事だろうが……。

 犯人を躊躇なく即処刑するほどの凶悪犯罪ではない……かもしれない。

 被害者の桔梗も、血みどろの処刑シーンなんて見たくないだろうし……。

 桔梗の意向に従って雷轟の殺害を踏みとどまった判断自体は、とりあえず正解としておこう。


「ごめん……。私のせいだよね……」


「いや、桔梗は悪くない。悪いのは、俺の早合点だ」


 俺は自らの頭を叩く。

 そんな俺の様子を、桔梗が微笑ましそうに見ている。


「ふふっ」


「どうした?」


「いつもの高志くんだなって……。優しくて、ちょっと助平で……。でも、いざというときは頼りになる」


「俺はそんな男なのか?」


「そうだよ。短い付き合いだけど……。高志くんのことはそれなりに分かってるつもり!」


 桔梗は胸を張る。

 そんな彼女を見て、俺は不意に悪戯心を覚えた。


「ほう? なら、俺が考えていることも分かるか?」


「え……?」


 俺は桔梗の胸を凝視する。

 彼女は顔を真っ赤にし、胸を押さえた。


「高志くん……!?」


「分かるのか?」


「い、いや……その……」


「どうなんだ?」


「わ、分かる……。分かるよ……」


 桔梗は真っ赤な顔で俯く。

 俺はそんな彼女に歩み寄り、その体を抱き寄せた。

 そして、その耳元で囁くように告げる。


「さっきの続きをさせてくれ。俺は、桔梗が欲しい」


「た、高志くん……」


「駄目か?」


「……いいよ。高志くんの好きなように……して……」


「ああ。そうさせてもらうよ」


 俺は桔梗の体を堪能する。

 雷轟によって辱められる直前だった彼女の記憶を、上書きするように……。

 闇に侵食されそうだった心を取り戻すように……。

 俺たちは甘いひとときを過ごすのだった。

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