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1494話 道場の現状

「それにしても、武神流の技は凄いな……。特に、縮地という技が……」


「ん……。そう言ってくれると嬉しい……」


 桔梗は無表情で頷く。

 だが、よく見ると口元がわずかにほころんでいた。

 まだ数日の付き合いだが、彼女の人となりが少しずつ分かってきたぞ。


「だが、こんなに素晴らしい指導者がいるのに、どうして閑散としているんだ?」


「ん……。それは……」


 桔梗は言い淀む。

 どうやら、あまり言いたくないことらしい。

 俺は静かに待つ。

 少しして、彼女はポツリポツリと話し始めた。


「ここからちょっと離れたところに、別の道場がある……。そこの師範との決闘で武神流の師範が負けて、しかも大怪我までしてしまった。だから……」


「なるほど……。それで門下生が離れてしまったんだな?」


「……ん」


 桔梗はコクリと頷く。

 師範同士の決闘で敗れてしまった……。

 それは武神流にとって、大きな痛手だ。

 道場の看板に傷がつく。


 その上、大怪我をしてしまったという。

 まだ若い桔梗が師範代を務めているのは、本来の師範が大怪我で療養中だからなのだろう。

 これでは、門下生が離れるのも無理はない。


「でも、師範代の桔梗だって強いじゃないか」


「ん……。でも、私は子ども。しかも女だから……」


「そうか……」


 桔梗の技術がかなりの水準にあることは、間違いない。

 だが、闘気や魔力による身体強化はほとんどできていないし、素の身体能力もまだまだ発展途上だ。

 総合的に見て、桔梗の戦闘能力はさほど高くないと言わざるを得ないだろう。

 例えば『技術的には桔梗よりも下だが、体格や身体能力は上』という大人の門下生がいたとして、彼が桔梗を舐めてしまうことだってあるかもしれない。


「でも、俺は桔梗を侮ったりしないぞ? 君の剣術には学ぶところがたくさんある。武神流は本当に奥深い」


「ん……。ありがとう……」


 桔梗はわずかに口元を緩める。

 表情の変化が乏しい彼女にしては珍しく、喜んでいるように見えた。

 この笑顔をもっと見たいな。


「高志くんは、とても筋が良い……。このまま鍛錬を続ければ、きっと強くなれる」


「そうか?」


「ん……」


 桔梗はコクンと頷く。

 俺はこの道場で、魔力や闘気を自主的に封印している。

 だが、『腕力強化』『視力強化』などのスキルは据え置きだ。

 基礎的な能力がしっかりとしている分、俺は純粋に技術の吸収に専念できる。

 桔梗から見て、筋が良く見えるのも当然だろう。

 決してうぬぼれてはいけない。

 うぬぼれてはいけないが……。


「筋が良いと言ってもらえて嬉しいよ。これからもガンガン鍛えてくれ」


「……ん。こっちもそのつもり。入門料の分は、損させない……」


 桔梗が言う。

 この調子で、武神流の技を思う存分に吸収させてもらうことにしよう。

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