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1480話 紅葉と流華

「はぁ、はぁ……。ひ、ひどい目にあったぜ……」


 流華が肩で息をする。

 新技『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』の効果を確認できたのは良かったのだが、あまりにもくすぐったすぎて体力を消耗してしまったようだ。

 最後の気力を振り絞って服を着たあと、力なく座り込んでしまった。


「流華、大丈夫か? 少しやり過ぎたな。すまない」


 俺は謝罪する。

 だが、流華は首を横に振った。


「いや……。兄貴が謝ることはないよ。これも、必殺技の効果を検証するためなんだろ?」


「まぁ、そうだが……」


 微風に悶える流華は美しかった。

 俺はその光景を存分に楽しませてもらったが……。

 あくまで、主目的は新技の効果を確認することである。


「だったらいいよ。オレが望んだことだし……。それに、こんなスゲェ必殺技が使えるなんて、ちょっとワクワクしてるっていうか……。むしろ、感謝しているくらいだ」


「そうか……」


 どうやら流華は満足したようだ。

 通常ではほとんど何も感じない程度の微風でも、彼はくすぐったさに身をよじっていた。

 紅葉も、背中に指で文字を書かれただけで盛大に悶えていた。

 そういった反応は、『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』のマイナス効果であると同時に、プラス効果でもある。

 突き詰めていけば、戦闘中に相手の動きを先読みできるというメリットにも繋がり、それは紅葉や流華にとって大きな武器となるだろう。


「お疲れ様、流華くん」


「おう。ありがとよ、紅葉」


 紅葉が流華に水筒を渡す。

 彼はそれを受け取ると、ゴクゴクと飲み干した。

 そんな2人のやり取りを見て、俺は少し疑問を感じた。


(仲がいいのは結構なことだが……。お互いにもっと意識するのが普通じゃないか?)


 俺は首を傾げる。

 紅葉と流華は、なんというか……完全にお友だちのノリだ。

 もちろん、それはそれで良いことなのだが……。

 年頃の少年が全裸でくすぐられていたのだから、見学者の紅葉だって多少の恥じらいを見せてもいいように思う。

 しかし、彼女はまったくそういう素振りを見せない。

 流華の方も似たようなものだ。

 同性の俺に対する羞恥心はあるようだったが、同年代の異性である紅葉の存在はほとんど気にしていなかった。

 まぁ、新技の検証をそっちのけでおっぱじめられても困るので、とやかく言うつもりはないが。


「兄貴?」


 流華が俺の顔を覗き込んでくる。

 おっと、いかん。

 考え事をし過ぎたようだ。

 もう、必殺技『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』の効果は確認できた。

 そろそろ、制約の内容についても話す頃合いだろう。

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