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1464話 女中たちの部屋

「ふむ、ここは……」


 城内を歩き回った末に、俺はとある一室にたどり着いた。

 今は中に誰もいない。

 だが、俺には分かる。

 おそらく、女中たちが休憩する部屋だろう。

 なぜ分かるかって?

 それは……。


「この匂い、そしてこの雰囲気……。間違いない」


 俺は断言する。

 この部屋からは、女の子の匂いがする!

 それも、10人分以上の!!


「これは、期待が持てるな」


 俺はニヤリと笑う。

 俺は『インビジブル・インスペクション』を維持したまま、こっそりと部屋に侵入した。

 そして、素早く部屋を物色する。


「やはり……あった!!」


 部屋の片隅に置かれた大きなかご。

 これは……あれだ。

 確か、行李こうりとかいうやつだな。

 竹や柳などを編んでつくられた箱で、衣類などを入れるのに使われる。

 この部屋に置いてあるのは特大サイズで、人が入れそうな大きさだ。

 そして、その中には……


「お宝がいっぱいだ!!」


 俺は歓喜した。

 女性もののふんどしが山のように積まれていたのだ!

 一見すると、白無地のものしかないようだが……。

 俺には分かる!

 これらの持ち主はおっさん侍や老齢の女中ではない。

 若い、それも美少女のものだろう!!


「ふふふ……。これは素晴らしい……」


 俺は行李に顔を近づける。

 ふんどしからは、女の子の甘い体臭が漂ってくる。

 心地よい香りだ……。


「おっと、危ない……」


 俺は我に返る。

 ふんどしに夢中になるあまり、『インビジブル・インスペクション』が解けるところだった。

 今は部屋に誰もいないが、もし誰かが入ってきたら大変なことになる。

 俺には崇高な使命があり、この行為はその下調べに過ぎない。

 決してふんどし泥棒ではないのだが、行為だけを見られたら言い逃れはできないだろう。

 冤罪を着せられるのは避けたい。


「……うっ!? 頭が……!?」


 俺は突然頭を抱え、その場にうずくまる。

 失われた記憶の断片が呼び起こされる……!

 そうだ、前にもこんなことがあった気がする。


 俺はカゲロウたちがいた『霧隠れの里』に潜入した俺は、情報収集のために一般家屋に忍び込んだ。

 そして、その後はふんどし泥棒として処断されかけたのだ。

 あれはなかなかのピンチだった。


 ……いや、それ以前にも似たような出来事があった気もするな。

 屋敷に干してあったユナやニムの下着を拝借して、自室に持ち帰って……。

 下着泥棒騒ぎになって……。

 みんなが『盗んだ奴を袋叩きにする』と意気込んでいたのだが、犯人が俺だと判明して微妙な空気になったのだ。


「うぐっ!?」


 頭にさらなる痛みが走る。

 せっかく記憶を取り戻せそうなチャンスだったのだが……。

 ええっと、ユ……。

 ダメだ、思い出せない。

 大切な人の名前だった気がするのに……。


「はぁ……。少し休憩しよう」


 俺は行李の中に入った。

 そして、ふんどしの上で横になる。

 女の子の香りを全身に感じながら、俺は束の間の休息を取るのだった……。

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