表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1485/1845

1457話 北牙道【ニムside】

「ぶえっくしょん!!」


 少女が大きなくしゃみをした。

 近くにいた女性が、心配そうに声をかける。


「風邪ですか? 仁夢にむさん」


「いえ……。単純にすごく寒いだけです」


 仁夢と呼ばれた少女が答える。

 年齢は10代前半といったところだろうか。

 やや幼い顔立ちだが、目鼻立ちは整っている。

 髪は肩にかかるぐらいの長さで、やや長めだ。


「そんなに寒いですかね?」


「寒いですよ! ここ『北烈地方』は寒冷な地域で、その中でも『北牙道』は最北に位置する極寒の地なのでしょう?」


「確かにそうですが……。私たちは、生まれたときからこの気候の中で暮らしていますから。今日は少し暖かいぐらいです」


 仁夢の言葉に、女性が答える。

 確かにその通りだった。

 この地域は、ヤマト連邦の中で最も寒い。

 しかし、今日に限って言えば……比較的暖かいと言えるだろう。

 サザリアナ王国という比較的温暖な国で生まれ育った仁夢は、この寒さになかなか慣れなかった。


「へ……へっくしょん!!」


「あらあら。仁夢さん、このままでは風邪を引いてしまいますよ? 作業は切り上げて、先に家に戻られますか?」


 女性が尋ねる。

 仁夢の正体は、もちろんニム=ハイブリッジだ。

 彼女はカゲロウの転移妖術により、ヤマト連邦の最南端付近にある佐京藩からなんとここまで強制転移させられてしまったのである。

 雪が降りしきる中、ニムは女性によって保護された。

 そして、ここしばらくは彼女の家に居候しているのだった。


「いえ、この程度の寒さで……へっくしょん! く、屈するわけにはいきません! わたしはもっと強くなって、くしょん! 南の方に向かうのですから!!」


 ニムはくしゃみをしながら宣言する。

 ミティと同様、彼女もまた今後の活動方針をどうするべきか悩んでいた。

 だが、共鳴水晶からの情報によると、ニムよりも北にいる仲間はいない。

 とりあえず南に向かっておけば、大きなロスは生まれないだろう。

 ニムはそう考えていた。

 そんな彼女の顔を心配そうに覗き込みながら、女性が告げる。


「仁夢さん……。なら、せめて防寒着を羽織りませんか? その格好は見ているこっちが寒くなってきます」


 そんな女性の言葉にも、ニムは首を横に振る。


「寒さに耐えるのも修行のうちです。くしゅっ!」


「でも、風邪を引いてしまいますよ?」


「この程度の寒さでへっくしょん! わ、わたしには土魔法があります。くしょん! この程度の寒さ、なんとかしてみせます」


 ニムは断言した。

 そして、魔力を集中させる。


「いきますっ!  【絶対無敵装甲・氷雪遮断之型】!!」


 ニムの体から魔力が溢れ出す。

 その魔力は周囲の地面を隆起させ、岩の鎧となって彼女の体を覆い尽くした。


「できました! この程度の寒さなど、これでヘッチャラです!」


「まぁ……。すごいですね、仁夢さん」


 女性が目を丸くする。

 ニムが作り出した岩の鎧は、とても立派なものだった。


「では、わたしも引き続き作業を続けますね! へくち!」


「は、はい。よろしくお願いします」


 女性は呆気にとられた様子で、岩鎧を纏ったニムを眺める。

 少しして彼女は何とか我に返り、ニムと共に作業に戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ