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1447話 眼球アタック

「うぅ……」


「少年、大丈夫か?」


 俺は少年に声をかける。

 少年は股間を隠すように身をよじった。


「何か……何か変だ……。俺のあそこが……」


「うん?」


 俺は首をかしげる。

 少年は紅葉や流華と同じく、12歳前後だ。

 自分の股間の仕組みについても、ある程度は知っていると思っていたが……。


「クソ! お前のせいで、何か変だ!! この野郎!!」


 少年は流華に文句を言う。

 だが、鼻血が出た状態で股間を押さえながらという状態では、いまいち迫力に欠けるな。


「文句を言いたいのはこっちだ! あんな……あんなことしやがって! よくも見たな、てめぇ!!」


 流華が少年に殴りかかる。

 どうやら、自分のアレを見られたことにご立腹のようだ。

 これぐらいの年頃の男にとってはデリケートな問題だからな。


「ぶへっ!? お、おい! 暴力は……」


「うるせぇ! 下手に出るのは終わりだ! ぶち殺す!!」


 流華はマウントポジションを取り、少年を殴り続ける。

 少年は鼻血を垂れ流しにしつつ、必死に言った。


「わ、悪かったって……。もうしないから……」


「ああ? しないってだけで許せるかよ!! 見たものを忘れるまで、ボコボコにしてやる!!」


「ひぃ!!」


 流華は少年をいたぶり続ける。

 そして――


「ぎゃああああぁっ!? 目がっ! 目がぁっ!!」


「あ、しまった……。狙いがズレて……」


 流華が慌てて少年から離れる。

 少年は目を押さえてのたうち回っていた。

 殴る際に流華の手元が狂って、眼球に指でも突っ込まれてしまったのだろうか。


 現代日本でも、小学生同士のケンカとかでありがちな光景だな。

 完全にガチのケンカならばそのまま続行される。

 だが、大抵の場合はこういったハプニングで手打ちになったりもする。


「おい、大丈夫か?」


 俺は少年に声をかける。

 少年は目を押さえながら、コクコクと頷いた。


「だ、大丈夫だけど……。目が……」


「俺に任せろ。――【キュア】」


 俺は治癒の魔法で少年の目を治療する。

 すると、少年の目が大きく見開かれた。


「あ、あれ? 痛くねぇ!?」


「よかったな」


「あ、ああ……。ありがとよ、兄ちゃん」


 少年は戸惑いながらも、お礼を言う。

 俺はさらに言葉を続けた。


「じゃあ、もう流華のことを許してくれるか?」


「……それは」


「悪いことは言わん。このあたりで手打ちにしておいた方がいい。これ以上、流華を怒らせない方がいいぞ。次は失明するかも……」


 俺と少年は、流華に視線を向ける。

 眼球ハプニングの直後は狼狽していた彼だが、今は怒りが再燃焼しているようだ。

 少年を鋭く睨みつけている。


「ひっ!」


 少年が小さく悲鳴を上げる。

 またボコボコにされると思ったのだろう。

 眼球アタックがトラウマになっているのかもしれないな。


「わ、分かった! 許してやるよ!!」


「ああ? 何だって?」


「許す! いや、許させてください! だから、もう寄ってくるな!!」


 少年が叫ぶ。

 これでは、どっちが被害者だったか分からんな。

 しかし、これでようやく事態が収束したか……。

 ……いや、まだだ。

 謝罪回りはまだ残っている。


「なぁ、少年」


「なんだよ?」


「これから、流華へのお怒り度が高めの人たちに謝りに行くんだが……」


「お怒り度が高めの人? ……ああ、商店街のおっちゃんたちか。それがどうした?」


「何かいい謝罪方法の考えはないだろうか?」


「はぁ? 知らねぇよ、そんなの……」


 少年は鼻を鳴らす。

 なかなか感じの悪い返事だが……。

 被害者であった彼だからこそ思いつく考え、というものもあるかもしれない。

 俺はもう一度、尋ねてみた。


「頼む」


「……ちっ! 仕方ねぇな……」


 少年は頭をガシガシとかく。

 彼はしばらく考え込み、そして一つのアイデアを出してくれたのだった。

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