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1429話 スリの少年

「紅葉、この街に来たことはあるのか?」


「い、いえ……。来たことはありません。山の中腹から見たことはありましたけど……」


「ふむ」


 俺は周囲を見渡す。

 ここは……桜花藩にある街の一つだ。

 人口は1000人を超えているだろう。

 城下町ほどではないだろうが、なかなか栄えている。


「高志様、これからどうするのですか?」


「そうだな……。まずは宿を確保しよう。数日ぐらい滞在して、情報収集を――」


「おっと! 気をつけろよ、兄ちゃん!! ボサッと歩いてんじゃねぇ!!」


 俺が紅葉と会話していると、誰かがぶつかてきた。

 見れば、ややガラの悪そうな少年が去っていくところだった。


「ふむ……。この街の治安は微妙そうだな……」


 俺は少年の背中を見つめる。

 そんな俺の袖を、紅葉はクイクイと引っ張った。


「あの……高志様」


「ん? なんだ、紅葉」


「何かをスられてしまったようですが……。追いかけなくていいのですか?」


 俺は自分の体を見る。

 すると、財布がなくなっていた。

 おそらく、先ほどぶつかってきた少年がスったのだろう。

 だが……。


「追いかける必要はない」


「え? で、でも……。お金がないと、宿に泊まることもできないのでは?」


 紅葉は不安そうな表情を浮かべる。

 そんな彼女に、俺は言った。


「盗まれた財布はダミーだ。スリ対策のな。金は入っていない」


 俺にはアイテムボックスがある。

 カゲロウやイノリに借りた貨幣は、全てアイテムボックスに保管済みだ。

 あの財布はダミーで、盗まれても問題ない。


「そうなのですか? ……しかし、中身がないとはいえ、財布を盗まれてそのままというのは少し腹が立ちますね……」


「まぁそうだな」


 俺が盗まれたのは、何の変哲もない財布だ。

 小物入れと言ってもいい。

 日本円にして、数百円ぐらいの価値だろうか。

 それなりに使い古していることを加味すれば、数十円ぐらいかな?

 いずれにせよ、大した損失ではないが……。

 盗まれて気分のいいものでもない。


「私にお任せください。高志様の財布をスった不届き者に、罰を与えましょう!」


 紅葉が張り切る。

 彼女には加護(微)が付与されている。

 体の調子が良いらしく、いろいろなことに張り切り気味だ。


「まぁ待て、紅葉」


「止めないでくだ……。高志様?」


 俺は紅葉を制止する。

 彼女は不満そうに俺を見たが、言葉を途中で止めた。


「じゃーん」


 俺は懐から、別の財布を取り出す。

 そして、それを紅葉に見せた。


「そ、それは?」


「さっきの少年の財布だ」


 俺は言う。

 紅葉は驚いた表情を浮かべた。


「い、いつの間に……。そのようなこともできるのですか?」


「ああ。俺にとっては造作もないことさ。もちろん犯罪行為だが、やり返しただけ。正当防衛だ」


 いや、正当防衛とは少し違うか?

 まぁ何にせよ、特に問題はないだろう。

 出るところに出たら、困るのはあの少年の方だ。


「中身は……ふむ、しけてるなぁ。大した額じゃない」


 俺は財布の中を覗き込む。

 そして、中の小銭を取り出した。

 日本円にして、数百円ぐらいだ。

 中古の財布を盗まれた対価と考えれば、ギリギリ黒字か?


「さぁ、思わぬ臨時収入だ。団子でも食べよう」


「あっ……。その……いいのですか?」


「もちろんさ」


 俺は笑顔で答える。

 そして、紅葉と共に団子屋に向かい始めるのだった。

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