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1355話 ミティ純愛ルート -1

 ふと気が付くと草原に立っていた。

 天候は晴れ。

 風が涼しげにざわざわと吹いている。


「ここはどこだ……?」


 辺りの様子を探る。

 見覚えのない草原が遠くまで広がっている。


 俺はサザリアナ王国の貴族だ。

 日本から異世界に転移したあと、ミティやアイリスを幸せにするため奮闘して……。

 ……ん?

 ええっと、あれ……?


 ミティ?

 アイリス?

 誰だっけ……?


「いかんな。記憶が混乱しているみたいだ」


 改めて整理しよう。

 俺は無職だ。

 いつも通り、自室でゴロゴロしていたはず。


 さっきの謎の記憶は何だったのだろう?

 どこかで見たアニメやマンガの影響で、夢でも見ていたのだろうか?

 すでに記憶があやふやだ。

 どんな名前の人たちがいたかすら、よく思い出せない。


「さて、これからどうするか……。……ん?」


 視界の隅で何かが点滅している。

 ゲームのアイコンのようなものだ。

 何やら、ステータスやミッションという項目が並んでいた。




 ――とりあえず俺は剣術を強化して、どこかの街を目指すことにした。

 その途中で、魔物に襲われている馬車を発見。

 行商人、冒険者、フードの人の3名がいた。

 俺はすかさず助太刀する。


「あ、危ない!」


「きゃっ」


 馬車に乗っていたフードの人は、女性だった。

 俺は彼女を背中に、魔物を何とか牽制する。


「安心してください。俺があなたを守り抜いてみせます!」


「あ、ありがとうございます」


 俺は女性に笑いかける。

 そのとき――ちょっとした突風でフードが脱げた。


「あっ……」


 俺は絶句する。

 その女性の顔は、とても美しかった。

 それに、可愛かった。


「あ、あなたは……?」


「私は……ミティと申します」


 彼女はそう名乗る。

 この出会いは運命だ!

 俺はそう確信する。

 勢い任せに魔物を討伐した俺は、改めてミティに向き直る。


「あの……私の顔に、何かついてますか?」


「いや……。その……」


 俺は口ごもってしまう。

 ミティの可愛さに見惚れたなんて言えない。


「俺と結婚してください!!」


 俺は勢いで求婚してしまう。

 これが俺とミティの出会いだった。




 ――その後、彼女の身分が奴隷であることを知った。

 価格はなんと……金貨400枚。

 とても払えない。

 だが、その程度の障害で諦められるほど、俺の愛は軽くなかった。


「さぁ、マイエンジェル・ミティ。今日から君は俺のものだ。他の誰にも渡さない」


「は、はい……」


 俺は金貨400枚の借金をして、ミティを購入した。

 異世界に来た即日に、凄まじい額の借金をしたのである。

 身元が怪しい上、前金もない状態だったのでかなり悪い貸し付け条件だった。

 金利は高く、借金を完済するまで街から出てはいけない。

 しかも、返済が滞った場合に俺は奴隷に堕とされてしまう。


 だが、幸いにして俺にはチートがある。

 その効果はまだ検証中だが……。

 たぶんきっと、何とかなるだろう。


「冒険者もいいが、怪我が怖いんだよな」


「は、はぁ……」


「思い切って鍛冶師になってみようか。ミティはドワーフだし」


「それは……」


 ミティが何か言いたそうにしている。

 ドワーフといえば鍛冶が得意だろう。

 そんな彼女に鍛冶をさせれば、きっと良い剣を作ってくれるはずだと思ったのだが……。


「実は、俺には特殊な技術があってね。ミティに鍛冶スキルを与えることができる。そして俺も同じく、鍛冶スキルを習得することが可能だ」


「そ、そんなことが……?」


 驚愕するミティ。

 俺はそんな彼女に、鍛冶術を取得させる。

 これでミティも立派な鍛冶師だ。

 併せて俺も鍛冶術を取得する。


 その後、俺たちは満を持してラーグの街の鍛冶師に弟子入りした。

 そして、着実に実力を伸ばしつつ借金を返済していくのだった。

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