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1328話 本当の名前

 俺は『ナイトメア・ナイト』という偽名の件や地上での俺の立ち位置について、メルティーネに説明している。


「先ほども言ったが、実は俺は貴族なんだ。そんな俺がヤマト連邦に向かっている。そして、サザリアナ王国とヤマト連邦は国交を結んでいない……。この意味が分かるか?」


「ええと、つまり……。貴族としてのナイ様は、何かしらの重要で極秘の任務を遂行中ということですの?」


「そういうことだ」


 俺はうなずく。

 メルティーネは納得したようだった。


「分かりましたですの……。ですが、それを私などに教えても?」


「メルティーネには知っておいてほしいんだ。俺は、君のことを愛しているからな」


 俺が言うと、メルティーネは頬を赤くしてうつむく。

 照れているようだ。


「あっ……。あの……わ、私もですの」


 メルティーネは消え入りそうな声で言う。

 とても小さな声だ。

 しかしもちろん、俺は聞き逃さない。

 彼女に対する愛おしさが込み上げてくる。


 メルティーネは、俺の胸に飛び込んで来た。

 俺は彼女を受け止める。

 彼女は小さく震えていた。


「ずっと……不安でしたの」


 俺を見上げるようにして、メルティーネは言う。


「初めて見たとき、ナイ様のことを運命の人だと思いましたの。でも、私が思ったよりも遥かにナイ様はすごい人で……。きっと、ナイ様は私のことなんてすぐに忘れてしまうだろうと……」


「メルティーネ……」


 俺はつぶやく。

 メルティーネは、今までずっと不安に思いながら過ごしてきたのだ。


「そんなことはないさ」


 俺は言う。

 そして、優しく微笑んだ。


「俺にとっても、メルティーネは運命の人だ」


「ナイ様……」


 メルティーネは瞳を潤ませる。

 俺は彼女にキスをした。

 そして、彼女をベッドに寝かせる。


「俺の本当の名を教えておこう。俺の名は『ナイトメア・ナイト』ではない。真の名は……」


「はいですの」


 メルティーネはうなずく。

 彼女の瞳には期待の色が浮かんでいた。

 そんなメルティーネを見下ろしながら、俺は告げる。


「俺の真の名は……『タカシ=ハイブリッジ』だ」


「タカシ様……」


 メルティーネはつぶやく。

 その瞳には、歓喜の色があった。


「嬉しいですの……。本当の名前を教えてくれて」


「ああ」


 俺はうなずく。

 転移前の名前としては、『高橋高志』の方が適切だが……。

 まぁそれはさすがにいいだろう。

 ミティやアイリスにも伝えていないし、そもそもこの世界で元の名を人相手に名乗ったことはない。

 海神ポセイドンのような特殊な存在を相手する場合を除けば、『タカシ=ハイブリッジ』が本名と言って問題はないはずだ。


「愛しているぞ……メルティーネ」


 俺はメルティーネの耳元でささやく。

 そして、彼女の衣服に手をかけた。

 彼女は抵抗しない。

 ――こうして俺たちは結ばれたのだった。

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