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1319話 ゲテモノ

 チンピラ集団『海神の怒り』と若手兵士集団『海神の憤怒』。

 彼らはクーデター騒ぎの償いとして、日々ボランティア活動に従事していると聞いている。

 反省しているはずの彼らだったが、どうやらまだ人族への偏見や嫌悪感は残っていたらしい。

 リーダー格の男は、握手した俺の手を強く握る。

 同時に、周囲の男たちも動き出した。


「おらっ! やっちまえ!!」


「おうよ!」


「やってやるぜ!!」


 彼らは俺を取り囲み、殴る蹴るの暴行を――加えない?

 なんだ……?

 俺は困惑する。


「ほらよっ! これが『海ぶどうのサラダ』だ!!」


「へへっ! こっちは、『タコの足焼き』だぜ!! 一部界隈で流行りだした、新食感のゲテモノ料理さ!!」


「おら、食えよ! 食えるもんならな!!」


 男たちは、料理の乗った皿を俺に近づけてくる。

 彼らはニヤニヤしながら言った。


「どうした、どうした? 心なしか、顔色が悪いぜ!!」


「ビビッてんのか? おい!」


「ギャハハ! ざまぁねぇな!!」


 彼らは次々と料理の皿を俺に近づけてくる。

 いったい何がしたいのだろう?

 俺はひたすら困惑していた、そのときだった。


「待て! 宴会の席での狼藉は許さないぞ!!」


 一人の人魚が声を上げた。

 彼女は……確か……。


「ヨルク! どうしてここに……?」


「もちろん、私もパーティーに招待されていたからだ。そなた――ナイトメア・ナイト殿に挨拶するためにな」


「なるほど……。そうだったのか」


 彼女の名前はヨルク。

 魔法師団の分隊長である。

 俺が作業員のおっさんたちと共に防壁の補修作業をしていたとき、その仕上げとしてやって来た集団のリーダーだな。


 ヨルクは結界魔法の使い手だ。

 俺も魔力補佐という形で手伝い、防壁の完成度を上げた。

 その縁もあって、こうしてパーティーに招待されていたようだ。


「加えて言えば、私はこのパーティーの要人警護も任されている」


「要人警護?」


「ナイトメア・ナイト殿と関わりを持った者は、この里に多数存在する。身分も様々だ。そなたや王族の方々を守るため警戒するのは、当然のことだろう?」


「ふむ……。それは確かにな」


 俺はうなずく。

 ヨルクは結界魔法の使い手だし、護衛としては適任だ。

 それにしても要人警護か。

 ちょうどいいタイミングで来てくれた。

 チンピラや若手兵士たちに絡まれて、少し困っていたところなのだ。


「ふんっ! 要人警護だと? そんなの関係ねぇぜ!!」


「そうだぜ、ヨルクさんよ!!」


「俺たちは、里の名物料理をそいつに食べさせようとしていただけだぜ!?」


 男たちが口々に言う。

 ふむ……。

 言っていることは、半分ほど分かる。

 確かに、彼らは俺に料理を持ってきていた。

 それを食べさせようとしていたのだろう。

 ならば、要人警護としてのヨルクに出番はない。

 理解できないのは、そもそもどうして俺に料理を食べさせたいのかだが――


「ふざけるなっ! 『海ぶどうのサラダ』はまだしも……『タコの足焼き』はゲテモノだろうが! 恩人にこんなものを食べさせるなど、言語道断だ!!」


 ヨルクはそう反論する。

 彼女は、俺の身を案じてくれているようだ。

 しかしそれを受けても、男たちに引き下がる様子はなかったのだった。

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