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1316話 リリアンへのラッキースケベ

 侍女リマと別れた俺は、静かにリリアンの元へと向かう。

 リリアンもまた、人魚族だ。

 下半身は魚のそれである。

 彼女は俺を見つけると、お辞儀をした。


「ナイトメア・ナイト様! 本日はお越しいただき、ありがとうございます!!」


「そんなにかしこまらなくてもいいさ。それより……おっと」


 俺はふらついてしまう。

 やはり、まだ酔いが醒めてないようだ。


「きゃっ!? あ、あの……このような場所ではちょっと……」


「ん?」


 俺は首をかしげる。

 何の話だろうか?

 ふにゅっ。


「ひゃんっ!?」


 変な声を出すリリアン。

 俺は、そこでようやく自分が何を握っているか気づく。

 どうやら、彼女の胸を鷲づかみにしていたらしい。

 彼女は顔を真っ赤にしている。


「す、すまない……」


 俺は慌てて手を離す。

 リリアンは恥ずかしそうに身をよじった。


「い、いえ……ナイトメア・ナイト様は恩人ですので……その……お触りになりたいというのでしたら、どうぞ……」


「いやいや! そういうわけじゃないから!!」


 俺は慌てて否定する。

 女好きの俺とはいえ、パーティー会場でおっ始める趣味はさすがにない。

 リリアンは頬を赤らめている。


(ヤバい……可愛いな)


 酔っているせいかもしれないが、リリアンがとても魅力的に見える。

 胸も大きいし、顔も可愛い。

 俺は思わず見惚れてしまった。


「あの……ナイトメア・ナイト様?」


「あ、ああ! すまない。少し飲みすぎたらしくてな……」


「まぁ! そうでしたか……」


「酔いを醒ましてほしくて、リリアンのところに来たんだ。治療岩の責任者である君なら、できるよな?」


「ええ、もちろん。そういうことでしたら、お任せください!」


 リリアンはうなずく。

 そして、俺に向けて手をかざした。


「――【キュア】」


 リリアンの手から優しい光が放たれ、俺の全身を包み込む。

 その光は心地が良く、気分がスッキリしてきた。

 完全に酔いから醒めるのではなく、適度な感じである。

 数秒ほどで光が消えると、俺は再びリリアンに話しかけた。


「ありがとう。おかげで楽になったよ」


「いえ……。むしろ、私の方こそありがとうございました。ナイトメア・ナイト様のお力になれて光栄です。あなたは、私たち人魚族にとっての恩人ですから」


 リリアンは、深々と頭を下げる。

 俺は恐縮してしまう。


「大げさだなぁ……」


「いえ、そんなことはございません!」


 リリアンは語気を強める。

 彼女は興奮しているようだ。


「治療岩が怪我人でいっぱいになったとき……私はもうダメかと思いました。ナイトメア・ナイト様は、間違いなく私たちにとっての救世主です」


 リリアンは深々と頭を下げる。

 彼女からは、俺に対する感謝の念が感じられた。


「ああ、どういたしまして……と返しておこう」


「ふふ、ナイトメア・ナイト様らしいですね」


 リリアンは口元に手を当てて笑う。

 この笑顔がまた可愛いのだ。

 彼女は20代。

 10代後半の王女メルティーネ、10歳ぐらいの侍女リマとはまた違った魅力がある。


「感謝されるのは悪い気がしないな。これからも、人魚族のみんなが平和に暮らせることを願っているよ」


「はい! ありがとうございます!」


 リリアンはそう言って微笑む。

 そう言えば、彼女も例のアレの条件を満たしたんだよな。

 談笑しながら、そのあたりも整理しておくことにしよう。

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