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1314話 酔い

「うぃ~。飲み過ぎたなぁ……」


 俺は頭をかく。

 久しぶりに羽目を外してしまったかもしれない。


「ナイトの兄ちゃん、大丈夫か? 一度、外にでて酔いを覚ましてきたらどうだ?」


「そうだな。そうさせてもらおう……」


 俺はおっさんの勧めに従ってその場を後にする。

 宴会はまだまだ続いており、盛り上がりも最高潮に達していた。

 メルティーネやエリオットも、楽しそうにしている。

 俺はその光景に少しホッとする。


(メルティーネが元気そうで良かった……)


 彼女は、今回のクーデターでかなり辛い思いをした。

 なにせ、実の兄が瘴気で暴走し、実の父に対してクーデターを起こしたのだ。

 最悪の場合、兄も父も失っていた可能性すらある。

 だが、今は笑っている。

 俺はそれが嬉しかった。


「さてと……」


 俺は宴会場を抜け出し、バルコニー的な場所へと移動した。

 火照った体を冷ますためだ。


「う~ん、気持ちいい……」


 夜風――ならぬ夜水が心地よい。

 俺は目を細めながら深呼吸した。


「こちらにいらっしゃいましたか、ナイト様」


「リマ?」


 振り返ると、そこにはリマの姿があった。

 さっきぶりだ。

 おっさんを相手した次は、将来性のある美少女。

 このギャップがいい。


「ずいぶんと酔っていらっしゃるようですね」


「ああ、少し羽目を外しすぎたよ……」


 俺は頭をかく。

 リマは心配そうに言った。


「大丈夫でしょうか? まだナイト様にご挨拶していない方々が沢山いらっしゃいます。ただ、ナイト様のお体に障っては……」


「心配いらないよ。少し休んでマシになった。また挨拶しにいくさ」


 俺は答える。

 リマは俺のことを心配して、わざわざ来てくれたのだろうか?

 彼女は本当に優しい子だ。

 俺は彼女の頭を撫でてやる。


「あ……」


 リマは嬉しそうに目を細める。

 可愛いものだ。


「でも、本当に無理はなさらないでください。大恩人様が倒れてしまっては大変です」


「分かってるって。……おっと」


 俺はふらついてしまう。

 リマが慌てて俺を支えた。


「ほら、やっぱりまだお加減が悪いのでは?」


「ううむ、そうかもな……」


 俺は苦笑する。

 実際、頭がボーっとしてきたし……。


「では、私がお支えいたします」


 リマはそう言うと、俺の腕を自分の肩に回させた。

 いわゆる、『お姫様抱っこ』の体勢だ。


「おっ?」


「こうしていれば、ナイト様も楽なはずです」


「ああ、ありがとう……」


 俺は礼を言う。

 水中なので、リマが俺の体重を支えることも不可能ではないらしい。


(……あれ? 男女逆じゃないか……?)


 少し疑問に思ったが、酔いが限界だったので気にしないことにした。

 調子に乗って飲みすぎてしまったようである。

 このレベルまでくると、自分で自分に治療魔法をかけて酔いを醒ますことも難しい。


 いや、技術的には難しくないが……。

 精神的に難しいのだ。

 日本の感覚で言えば、泥酔して帰宅した際に風呂に入って着替えるのが面倒だから、そのまま布団に直行してしまうようなものだろうか。

 本当は、ちゃんと着替えたりしてから寝た方がいい。

 だが、その方がいいと分かっていても、なかなか踏ん切りがつかないこともあるのだ。


「リリアンさんのところへご案内します」


「助かるよ……」


 リリアンは、治療岩の責任者である女性だ。

 彼女も宴会に招待されているので、会場のどこかにいるはずだ。

 彼女は治療魔法を使える。

 俺の酔いをいくらか醒まさせてくれることだろう。

 俺はリマにお姫様抱っこされたまま、リリアンの元へと向かうのだった。

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