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1288話 大丈夫だ、問題ない

 魔法師団の若手が、MP切れによりダウンした。

 俺は彼女の代役として、結界魔法の補助役を担うことになった。


「では、これより結界魔法の発動を開始する! 皆の者、準備はいいな!!」


 分隊長が叫ぶ。

 その場に集まった人魚たちは、頷いてそれに応えた。


「ではいくぞ! ――我らが身に宿すは、守りの魔力! 不届きなる者の侵入を阻む壁となりて、この里に静寂と安寧をもたらすべし!! 【ヴェイル・フィールド】!!」


「「【ヴェイル・フィールド】!!」」


 分隊長の声に続き、魔法師団の面々が詠唱する。

 すると、彼女たちの身体から淡い光のオーラが立ち上り始めた。

 無事に結界魔法が発動されたようだ。


「どうだった? 俺の補助は」


「うむ、問題ない。というか、なかなかに見事な補助だった」


 分隊長が頷く。

 彼女は結界魔法により出現した壁を見つめながら、続けた。


「そなたの魔力制御は的確だ。MP切れとなった彼女も、新入りとはいえ栄えある魔法師団の団員。それなりの技量を持っているのだが、それに負けず劣らずだったな」


「それはどうも」


「うむ。では、次の結界魔法に移ろう」


 分隊長は頷くと、再び呪文詠唱の準備を始めた。

 人魚の里を守る防壁は大きい。

 何度も発動を繰り返す必要がある。

 できれば効率を良くして、時短したい。


「一つ確認したいのだが」


「ん?」


「今ので、結界魔法の補助のコツを掴めた。補助の出力をもっと上げても構わないか?」


「なに?」


 分隊長が眉をひそめる。

 俺は畳みかけるように言葉を続けた。


「強い魔力補助があった方が、結界魔法の効力も上がるはずだ。しかし、あまりにも強すぎると制御が難しくなる。だから念のため、確認しておこうと思ってな」


 他者の魔法に対する魔力補助。

 言ってみれば、電動自転車のモーターみたいなものだろうか。

 あるいは、ヨットに乗っているときの追い風と言ってもいいし、レースゲームにおける加速アイテムと言ってもいい。


 あった方が便利で速いのは間違いないのだが、あまりにも強力すぎるのも問題だ。

 電動自転車のモーターが強力すぎると事故に繋がり、ヨットに乗っているときの追い風が強すぎると転覆し、レースゲームにおける加速アイテムが強すぎると壁に激突してしまう。

 このあたりの調整は、かなり繊細な感覚が必要だ。


「ふむ……。確かに、それは事実だな」


 分隊長がうなずく。

 人族と人魚族、陸上と海中という違いはあれど、魔法制御に関する常識はある程度共通しているみたいだな。


「よし、許可しよう。より強く補助してくれるなら、より強固な結界魔法を構築できるはずだ」


「制御は問題ないのか?」


「大丈夫だ、問題ない。あまりにも常識外れに強力な補助ならマズイが、さすがにそこまでの出力はないだろう」


「ふむ。分隊長のお前がそう言うのなら、信じよう」


 念のため聞いたが、問題なさそうだな。

 俺の全力をもって、結界魔法を補助しよう。

 作業をさらなる前倒しとかに繋がれば、人魚族から俺への評価や信頼がさらに高まるはずだ。

 俺はそんなことを考えつつ、集中していくのだった。

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