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1286話 魔法師団

「ふむ。確かに防壁が補修されておる」


 やって来た魔法師団の隊長っぽい女性人魚が、防壁を見て頷く。

 俺はそんな彼女に向けて問いかけた。


「お前が団長か?」


「否。私は結界魔法担当の分隊長に過ぎない。団長は、エリオット殿下と共にリトルクラーケンの討伐へ向かっておられる」


「討伐か……」


 そう言えば、エリオット王子はそんなことを言っていたな。

 本人や戦士たちだけでなく、魔法師団のトップも連れていっているらしい。

 それだけ重要な任務なのだろう。

 無事に帰ってきてくれるといいが……。


(まぁ、今は目の前のことを見届けるか)


 俺は気持ちを切り替えると、分隊長に向き直る。


「それで、結界魔法による補強作業とやらはいつ始まるんだ?」


「すぐに始めよう。……そなたがナイトメア・ナイト殿か?」


「ああ」


「エリオット殿下から話は聞いている。人族でありながら、それなりに役に立つらしいな」


「それなりに、か……」


 俺は苦笑する。

 まぁいいさ。

 エリオット王子からの信頼は、これからもっと勝ち取っていけばいい。


「そなたは結界魔法に関して、どの程度の知識を持っている?」


「全く知らん。名前しか聞いたことがない」


「そうか。ならば、邪魔にならんよう端の方で見ているがいい」


「ああ、そうさせてもらうよ」


 俺は頷く。

 分隊長も頷き返すと、魔法師団のメンバーたちに向けて声を上げた。


「では、これより結界魔法の詠唱を開始する! 結界魔法を構成する主要メンバーは前へ! 残りは、後方から魔力補助をするように!!」」


「「はっ!!」」


 分隊長の声に、数人の人魚が前に出る。

 そして彼らは、一斉に呪文を唱え始めた。


「「我らが身に宿すは、守りの魔力! 不届きなる者の侵入を阻む壁となりて、この里に静寂と安寧をもたらすべし!! 【ヴェイル・フィールド】!!」」


 呪文を唱え終えた直後。

 彼女たちの身体から、淡い光が立ち上った。

 そしてそれは、俺たちが補修してきた防壁の石材に吸収されていく。


「これが結界魔法か……」


 俺はつぶやく。

 見るのは初めてだな。

 この結界魔法は、外部から認識しづらくなる効果があるらしい。


「うむ、上手くいった。次だ」


 分隊長も頷く。

 彼女は結界魔法の出来に満足しているようだ。

 その後も、複数の結界魔法が防壁の周辺に施されていった。


「これで、今日の予定の7割は終了したな」


 分隊長が呟く。

 俺はその呟きに、問いかけた。


「まだ7割か?」


「ああ、そうだ。今回の襲撃を受け、結界魔法の重要性が見直された。一通りの結界魔法を展開した後、さらに重ねがけしていく予定となっておる。悠長にしている暇はない」


「なるほどな」


 これも、ジャイアントクラーケンが討伐された影響と言っていいかもしれない。

 人魚族にとって奴は危険な魔物だ。

 討伐する方が良かったのは間違いない。

 ただ、里の安全性という点だけで言えば、討伐によりやや危険が増している。

 奴はその巨体ゆえ、里の周囲にある天然の岩石を抜けることが難しいだろうからな。

 危険なのは、あくまで狩りや採取に出かけたときの話である。


 そして今。

 ジャイアントクラーケンがいなくなったため、他の魔物の行動範囲が変わった。

 捕食者がいなくなったことで、今まで身を潜めていた他の魔物たちも活動的になっているのだ。

 最大級の危険はなくなった代わりに、ぼちぼちぐらいの危険の数が増した形だな。


「さて、お前たち。まだまだ集中して――む? そこ、どうした?」


「あっ!? も、申し訳ありません!!」


 分隊長に声をかけられたのは、一人の若い人魚だった。

 彼女は後方で魔力補助を担当していた内の1人だな。

 彼女は慌てて頭を下げると、謝罪の言葉を述べた。


「謝罪を要求しているのではない。どうしたと聞いておる。なぜ集中が乱れておるのだ?」


「そ、それが……。MPが尽きて来てしまいまして……」


「なに? 今日の予定はまだ3割も残っているというのに……」


 分隊長は目を細めながら、その人魚に目を向ける。

 彼女は恐縮しきった様子で俯いたままだ。

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