表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1296/1845

1272話 ひと休憩

 俺は狂戦士を聖魔法で浄化した。

 その後も、引き続き重傷者たちを治療していく。


「ふぅ……。とりあえず、これで一通りは終わったな」


 最後の一人を治療し終えた俺は、一息つく。

 生死の境をさまよっているような者は、もういない。

 ひと安心だ。

 俺とリリアンは、治療岩の職員用休憩室に向かう。


「ナイトメア・ナイト様……! お見事なお力でした……!!」


 休憩室に入るや否や、リリアンが感激した様子で言った。

 彼女の目には涙が浮かんでいるように見える。


「いや、俺だけの力じゃないさ。リリアンの協力があってこそだ」


 俺はそう言った。

 チート持ちの俺とはいえ、1人ではできることに限界がある。


「そんなご謙遜を……!」


 リリアンは首をブンブンと横に振った。

 可愛らしい反応だ。


(当初はどうなるかと思ったが……)


 俺はホッと胸をなでおろす。

 人族への偏見が強めのリリアン。

 そんな彼女も、今やすっかり俺への信頼を深めてくれたようだ。


「ナイトメア・ナイト様は……どうしてここまで慈悲深く、お優しくなれるのですか?」


 ふと、リリアンがそんな問いを投げかけてきた。


「ん? どうした急に」


 俺は首を傾げる。

 すると、彼女は慌てたように手をブンブン振って弁解した。


「も、申し訳ありません! お気を悪くされましたでしょうか!?」


「いや、別に構わないが……。どうしてそんなことを?」


 俺の問いに、リリアンは答える。


「人族の方にとって、人魚の里は縁もゆかりもない場所。それに、私を含め失礼な態度を取る者も多いです。それなのに、あなたは私たちのためにここまで尽くしてくださる。なぜ、そこまでしてくださるのか……不思議に思ったのです」


「ふむ……」


 確かに、彼女にとっては不思議に思えるかもしれない。

 だが、俺にとっては当たり前の行動だ。

 ……ミッション?

 人族と人魚族の融和?

 そんなのはついでの目的だ。 


「美女を助けるのに、理由なんているのか?」


 俺は堂々と胸を張り、答えた。

 すると、リリアンは一瞬固まった後――


「ふぇっ!?」


 素っ頓狂な声を上げた。

 そのまま、黙り込んでしまう。


(はて……?)


 俺は首を傾げる。

 何かマズイことを言っただろうか?


(ふむ……。もしかすると、リリアンには恋人がいるのかもな。いや、既婚の可能性すらある)


 そんな考えに至った。

 考えてみれば当たり前のことだ。

 リリアンは、若くしてこの治療岩の責任者を務めている。

 しかも美人だ。

 そんな彼女に恋人がいても、何ら不思議はないだろう。


(一応、聞いておくか)


 そう思った俺は、リリアンに話しかける。


「ちなみにだが……。リリアンは恋人とかいるのか?」


「へ!? あ、あの……えっと……!」


 リリアンは顔を真っ赤にして、うろたえている。

 俺は心配になってきた。

 体調でも悪いのだろうか?


「どうした? 急に体調でも悪くなったのか?」


「い、いえ! そういうわけでは……! あ、あの……。私は……」


 リリアンはしばらくモジモジとしていたが……。

 やがて意を決したように言った。


「私に……恋人はいません! フリーです! 恋人募集中です!!」


「そうか。良かった」


 俺はホッと胸を撫でおろす。

 一安心だ。


「ふふふ……。では、さっそく仲を深めよう」


 俺はリリアンに歩み寄る。


「ふぇっ!? あ、あの……!?」


 リリアンは動揺した様子で後ずさるが、すぐに壁に背中をぶつけた。

 もう逃げられないだろう。

 そのときだった。


「ここにナイトメア・ナイト殿がおられると聞いた。相違ないか?」


 休憩室の入口の方から、声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこにはエリオット王子がいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ