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1269話 闇の瘴気

「ダレもオレにサカラウな! トウバツ報酬は全てオレのモノだ! ジャマするヤツはコロスぞ!!」


「なっ……!? こ、これは……!」


 俺はその姿を見て驚愕の声を上げる。

 そこには狂人と化した戦士がいた。

 彼の手足はおぼつかない様子でプルプルと震えているし、目や口も完全に焦点が合っていない。

 明らかに普通ではなかった。


「き、危険です! ナイトメア・ナイト様! お下がりください!!」


「いや……。見たところ、この症状は……」


 俺は狂人と化した戦士を見て確信する。

 間違いない……。

 この症状は……。


「ナイトメア・ナイト様、何かご存じなのですか!?」


 リリアンが焦ったように問いかけてくる。

 この様子では、彼女は原因が分からないのだろう。


「ああ……。これは、おそらく『闇の瘴気』の影響だ」


 俺は確信を持ってそう言った。

 そうに違いない。


「闇の瘴気……? それは一体……?」


「その名の通り、闇属性の魔力を帯びた強力な呪いだ。これを受けた者は、人格がおかしくなる。負の感情や欲望を増幅されてしまうんだ」


「なっ!? そんな恐ろしいモノが……!?」


 俺の言葉にリリアンが愕然とした表情を浮かべる。

 彼女は治療魔法使いではあるが、聖魔法使いではない。

 闇の瘴気のことは知らなかったようだ。


「瘴気を帯びてしまう原因は様々だ。悪意を持った闇魔法使いによる魔法を受けたり、瘴気溜まりに長期間触れてしまったり、瘴気に侵された魔物から攻撃を受けて感染したり……。何か心当たりは?」


「い、いえ……。特に心当たりはありませんが……」


 俺の質問にリリアンは首を横に振る。

 だが、周囲の戦士は違った。


「俺たちが戦った、リトルクラーケンが原因じゃないか?」


「リトルクラーケンだと?」


 戦士の一人が思い出したように発言する。

 俺は彼に聞き返した。


「ああ。今回の魔物の中でも、一際凶暴な魔物がいたんだ。そいつは黒いオーラをまとっていたように思う」


「ほう……。この戦士は、そのリトルクラーケンから攻撃を受けたのか?」


「そうだ。そいつ、結婚したばかりで金や戦功を稼ぎたがってて……。今回の戦いでも、一番槍として無茶をしていた」


「なるほどな……」


 俺は納得したようにうなずく。

 それなら、いろいろと辻褄が合う。

 彼が闇の瘴気に侵されていることも、そして『トウバツ報酬は全てオレのモノだ』などと主張していることも。


「ぐ……! が、ああああぁっ!!」


 狂戦士は、ついに暴れ出した。

 その目は完全に俺を敵として捉えている。


「ナイトメア・ナイト様! お逃げください!!」


「ん? どうしてだ?」


「あなたはこれから、数多くの者をお救いになる偉大な治療魔法使い……。こんなところで命を落とすべきではありません!!」


 そう言って、リリアンは俺の前に立ちふさがった。

 彼女の様子に迷いはない。


「私が時間を稼ぎます。ですから、あなたは逃げてください!」


 彼女の判断も、完全に間違っているわけではない。

 突発的な戦闘が発生した場合、凄腕の治療魔法使いは優先的に逃がす必要があるだろう。

 大抵の場合、治療魔法使いに戦闘能力は期待できないしな。


 そんな彼女を見て、俺は――

いつもお読みいただき、ありがとうございます!


本作のウェブトゥーン版ですが、本日の更新にて「第一シーズン完結」となりました。

原作小説における、第110話(第4章の最後)までですね。

一般的な横読み漫画で言えば4~5巻分くらいでしょうか?

週刊連載ということもあり、1年足らずでも結構進みましたね。

キリの良いところまで進めてもらえて良かったと思います。


第二シーズンがいつ始まるのかは未発表です。

原作通りなら、モニカとニムが加入して、ミリオンズを結成して、屋敷をもらって、ミティと結婚して……といった流れですね。

原作者の私としては、早めの再開を信じつつ、宣伝がてら原作小説(本作)の更新を続けていくのみ……。


どこまで私の気力が持つかにもよりますが、構想としては人魚編やヤマト編の後もまだまだ続く予定にしています。

引き続きお楽しみいただけるよう、頑張ります!


また、既存作の転載や改訂、新作の構想なども進めていく予定です。

そちらについても応援いただけましたら幸いです!

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