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1263話 重傷者多数

 俺は治療岩の責任者リリアンと話していた。

 そんな俺たちの元に駆け込んできたのは、人魚族の戦士だ。

 彼は慌てた様子で叫んでいる。


「繰り返します! 魔物の襲撃により、重傷者多数! 至急、治療をお願いいたします!!」


「は、はい。分かりました……!」


 リリアンはうなずくと、近くの人魚族の女性たちに指示していく。

 責任者として、この場を取り仕切るようだ。


「なぁ、リリアン。俺は……」


「邪魔しないで! あっちに行っててください!!」


 リリアンに拒絶されるが、ここで引き下がるわけにはいかない。

 俺は反論する。


「邪魔なんてしないさ。負傷者の受け入れに協力したいんだ」


「人族が人魚族のために尽力するなど、信じられません……!」


 リリアンは困惑している様子だ。

 だが、俺が食い下がるとため息をついて答えた。


「……問答している時間さえ惜しいですね。この場にいることは許可します。ただし、私たちの邪魔だけはしないように!」


「分かった。任せてくれ」


 俺はリリアンに許可を取ると、負傷した戦士が運ばれてきたときに対処できるよう準備を整える。

 しばらく待っていると、重傷者たちが運ばれてきた。


(これは……ひどいな)


 俺は彼らを見て顔をしかめる。

 今回の襲撃は相当手ひどくやられたのだろう。

 多くの戦士たちが深手を負っている。

 中には、命の危険さえ感じられる者もいた。


(だが、魔法なら何とかなる……!)


 俺は集中する。

 そして、さっそく治療魔法を行使しようとするが――


「邪魔ですよ!」


 ドンッ!

 俺は横から何者かに突き飛ばされる。

 突然の衝撃に対応できず、その場から退かされてしまった。


(な、なんだ!?)


 俺が振り返ると、そこにはリリアンがいた。

 彼女は俺の方には目もくれず、重傷者たちに駆け寄っている。


「大丈夫ですか! 今、治療します!!」


「あぁ……リリアン殿。ありがとうございます……」


 人魚族の戦士が安心した様子を見せる。

 その反応を見て、俺は状況を察した。


(そうか……。リリアンは責任者だし、治療の腕前も確かなはずだ。戦士たちとも知らない仲ではないようだし……。ここは、彼女に任せるしかないな)


 俺は歯がみながらも、この場はリリアンに譲ることにした。

 適切な治療を受けられるのであれば、わざわざ俺がしゃしゃり出る必要はない。


「――【ヒール】!」


 リリアンは俺を突き飛ばしたことなど意に介した様子もなく、重傷者たちに次々と治療魔法を行使していた。

 彼女の腕前は悪くない。

 次々に怪我を治していく。

 他の職員たちも、テキパキと動いていた。


(うーん……。しかし……)


 俺は内心でうなってしまう。

 最初に運び込まれた重傷者の初期治療は、ほぼ終わったと言ってもいいだろう。

 一刻を争う事態は回避したと言っていい。

 だが、まだまだ完治には程遠い。

 このまま放っておけば、数十分後にはまた容態が悪化してしまう。

 しかも、それだけではない。


「ううっ! い、痛ぇ……!」


「ぐうぅ……」


 重傷者たちは次々と運び込まれていた。

 彼らの苦悶の声を聞くだけで心が痛む。


「はぁ、はぁ……! これほど重傷者が多いなんて……! だ、大丈夫ですか……!」


 リリアンは必死に治療を続ける。

 他の職員たちも懸命だ。

 しかし、手が足りていないのは明らかだった。


(……ここは俺の出番のようだな。リリアンには疎まれるだろうが、そんなことを言っている場合ではない)


 俺は覚悟を決めると、リリアンに声をかけるべく前に出るのだった。

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