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1254話 勇敢なる海の戦士

「なんだ、お前は!」


「どうして人族がここにいる!」


「出ていけ!」


 軽傷者たちが俺に敵意を向ける。

 女性職員は既に去っているし、メルティーネは俺の後方にいる。

 俺を守ってくれるものはない。


(まぁ……こうなるか)


 俺は軽くため息をつく。

 人魚族は、20歳以上の年代は人族への偏見や嫌悪感が強い。

 それでも女性職員は、最低限の礼節を保ってくれていたが……。

 あれは彼女自身の気質に加え、王族であるメルティーネの存在も大きかったのだろう。

 メルティーネに後方へ控えてもらった状態で荒々しい戦士たちの前に出れば、こうなるのは必然である。


「俺はお手伝いさ。メルティーネ姫から直々に、この治療施設で手伝いをするよう仰せつかった」


「なんだと!?」


「ふざけるな! そんなわけないだろ!!」


「さっさと出ていけ!」


 俺は正直に伝えた。

 だが、戦士たちは俺たちを追い出そうとするのをやめなかった。


(さて……。どうしたものかな)


 この治療施設に来たのは、あくまで患者の治療をするためだ。

 俺を嫌う者たちを問答無用でボコってハイ終わり……というわけにはいかない。

 どうしたものかと考えていると……。


「あなたたち。少し落ち着きなさって」


 戦士たちをなだめる声があった。

 もちろん、メルティーネだ。

 できれば俺1人の力で解決したかったのだが、仕方ない。


「姫様……!?」


「まさか、本当に……?」


「こ、これはとんだご無礼を……」


 人魚族の戦士たちはギョッとする。

 彼らは慌ててその場にひれ伏そうとした。


「おやめになって。負傷者にそのような姿をさせるわけにはいきませんの」


「し、しかし……」


 メルティーネの言葉に、人魚族の戦士たちは躊躇する。

 どうにも、この里における王族のポジションってのが分からないな……。

 子どもたちが気安く接したかと思えば、こうして戦士たちはかしこまる。

 一体、どっちの姿がメルティーネの正しい姿なのだろうか……。


「大丈夫ですの。楽にしてください」


 メルティーネが優しく言う。

 その言葉に、戦士たちはようやく緊張を解いたようだった。


「ナイ様……。あとはお願いしても、よろしいですの?」


「ああ。任せておけ」


 メルティーネが小声でささやくので、俺はうなずき返した。

 今度こそ、俺が1人で頑張らないといけない。


 今回の少目標は彼らの治療を行うことだが、最終目標は違う。

 最終目標は、人魚族から人族への偏見を解き、保留中となっている俺への処分を完全になくしてもらうことだ。

 そのためには、メルティーネの力を借りてばかりではいられない。

 人魚族の戦士たちが落ち着くのを待って、俺は彼らに話しかけた。


「みんな、よく聞いてくれ。俺は治療魔法を使えるんだ。お前たちを癒やしたい。治療魔法を受け入れてもらえないか?」


「バカか!? 人族に助けてもらうくらいなら死んだ方がマシだ!」


「こんな傷、しばらく休んでいたら治る! 薄汚い人族に治療してもらうつもりはねぇ!!」


 人魚族の戦士が叫ぶ。

 先ほどと似たような反応だ。


(さて、どうしたものか……)


 俺は頭をひねる。

 ここで揉めている場合ではないし、どう説得したらいいか……。


「なぁ、頼むよ。俺が助かったのは、お前たち――勇敢なる海の戦士たちのおかげだと聞いている。偉大な盟友たちの傷を癒やしたいんだ。俺にその栄誉をいただけないか?」


「え、栄誉……? 俺たちを治療することそのものが……?」


 俺が発した言葉に、戦士たちはピクリと反応する。

 少し効果ありか……?

 俺はさらに畳みかける。


「そうだ! 俺は誇り高き戦士たちを治療したいんだ。こんな名誉なことはない! 頼む、俺に勇敢なる盟友たちの傷を癒やさせてくれ!!」


 俺は熱く語る。

 ひたすらに彼らをヨイショしまくる。

 お世辞ではあるが、完全な嘘というわけでもない。

 チートを持っていない者たちがジャイアントクラーケンに挑むには、凄まじい勇気が必要だったことだろう。


「そ、そうは言われてもなぁ……」


「そもそも、お前は誰なんだよ? 盟友とか言われても分からねぇし……」


「姫様といっしょにいるってことは、人族からの使者か何かなのか? そんな話は聞いていないが……」


 人魚族の戦士たちは動揺している。

 あれ?

 今さらそこなのか?

 ジャイアントクラーケンに大ダメージを与えていた人族が里にいること自体は、すっかり噂になっているはずだが……。


 仕方ない。

 まずはそこから説明していくことにしよう。

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