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1210話 怨霊

「おにーさん……。むにゃむにゃ……」


 ゆーちゃんは幸せそうな寝言を口にしながら、眠っていた。

 いい夢でも見ているのだろうか?

 幽霊が寝言を言うのも珍しい。


「もう逃さないんだからね……」


「ん?」


 ゆーちゃんが何かを言った気がするが、よく聞き取れなかった。

 まぁいい。

 とりあえず、彼女のステータスを確認してみよう。



レベル?、ユーファミア繝ォ繝?繧ャ繝ウ繝

種族:蟷ス髴

身分:荳ュ邏夐怺

役割:蝨ー邵幃怺

職業:螳郁ュキ髴

ランク:荳肴?


HP:低め

MP:??

腕力:??

脚力:??

体力:??

器用:??

魔力:高め


残りスキルポイント:???

スキル:

螳滉ス灘喧陦レベル4(3+1)

??



(見事に文字化けばかりだな……。古代アンドロイドのティーナより酷い)


 俺はそう感じた。

 ここまで文字化けが多いと、ホラーゲームのような雰囲気さえある。

 ゆーちゃんは幽霊だし、そういう雰囲気を出されると少し恐ろしいな……。


「んん……」


 ゆーちゃんが寝返りを打った。

 そのとき、彼女の顔が俺の方へ向く。


「やはり可愛いな……」


 俺はそう口にした。

 ゆーちゃんの寝顔は、これぞ美少女といった可愛さである。

 幽霊だが、そこはご愛嬌だ。


(それにしても……)


 俺は考える。

 ここまで全てが順調なのは、ちょっと怖いな……。


 ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ。

 マリア、サリエ、リーゼロッテ、蓮華、レイン。

 ティーナ、ドラちゃん。

 そして、ゆーちゃん。

 こんなにたくさん美少女たちと、短時間によろしくやってしまっている。

 チートのおかげとはいえ、これほど幸せでいいのだろうか?

 そう思ってしまう。


「俺のすぐ近くには、ゆーちゃんが眠っている。そして、右手を伸ばせばリーゼロッテが、左手を伸ばせばアイリスが……」


 俺は位置状況を整理する。

 節操なく楽しんだ影響で、各人は不規則な位置と姿勢で眠っていた。

 そんな中、すぐ側にゆーちゃんがおり、左右の手が届く範囲にリーゼロッテとアイリスがいる。

 少し離れたところには、美しい裸体を晒した他の美少女たちの姿も見える。


(どんなパラダイスだ、ここは……。ハーレム、ここに極まれりだな)


 そんなことを考える俺。

 このまま、俺も一眠りしてもいい。

 だが、さらなる幸せのために、ここは――


「右手に巨乳を、左手に美乳を」


 俺はそう口にして、行動を開始した。

 まず俺が右手を伸ばしたのは、リーゼロッテだ。

 彼女の大きな胸を揉みしだいてやる。


「ん……」


 そんな声が聞こえるが、起きない。

 そして次に俺は、左手をアイリスの胸の揉みに向かった。


「ううーん……」


 アイリスも少しの反応を示した。

 しかし、起きる気配はない。

 なかなか眠りが深いようだ。


「うむ。すばらしい……」


 俺は左右の手の感触を堪能する。

 別に、最終ラウンドに突入する気はない。

 見ての通りリーゼロッテやアイリスは熟睡しているし、俺としても正直なところ疲労困憊だ。

 調子の乗ってハッスルしすぎた。

 気を抜くとすぐにでも眠ってしまいそうである。

 まぁ無理に起きておく理由もないし、この左右の手の感触を楽しみつつ眠りに――


「……おにーさん」


「ん?」


 俺の耳にそんな声が聞こえる。

 ゆーちゃんの声だ。

 俺が横を向くと、ゆーちゃんが俺の体に顔を埋めていた。


「おにーさんが女好きなのは知ってるけどさ……。それはあんまりじゃない……?」


「それって?」


「私がすぐ近くにいるのに……他の女の胸なんて揉んで……」


 ゆーちゃんが恨めしげな声を発した。

 それもそうか……。

 俺の女好きは知れ渡っているので、複数の女性を愛すること自体に怒るメンバーはいない。

 幽霊として俺たちの様子を見守ってきたゆーちゃんも、そのあたりの理解はあったはずだ。


 しかし、さすがにこの状況はマズかったらしい。

 ゆーちゃんが俺の胸元にいる状況で、わざわざ左右の手を伸ばして他の女性の胸を堪能していたのだから……。


「すまんな。ゆーちゃんを差し置いて、リーゼロッテやアイリスの胸を揉んだりして……」


 俺は素直に謝罪する。

 ここは言い訳できない。

 俺が悪いと認めよう。


「……許さない」


「へ?」


「許さないぃいい!! 恨めしや~!!!」


「うおっ!?」


 ゆーちゃんが大声を上げて、顔を上げた。

 その表情は怒りに染まっており、まるで怨霊のようである。


「ひぃっ!? う、うわあああぁあっ!!!」


 俺は恐怖のあまり、絶叫した。

 そしてそのまま、意識が薄れていく。


「ふっふーん! どう、これで反省した? ってあれ……?」


 最後にゆーちゃんの声が聞こえた気がした。

 だが、俺はそのまま意識を失ったのだった。

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