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1208話 聖剣エクスカリバー

 俺はゆーちゃんに迫っている。

 幽霊とはいえ、彼女は可愛い。

 俺としては、何の不満もなかった。


「おにーさん……。もう許して……」


「ダメだ」


 俺は即答する。

 そして、ゆーちゃんの唇を奪った。


「んむっ!?」


 ゆーちゃんは驚いたように目を見開く。

 そんな彼女の口内を俺は堪能し――


「あれ?」


 不意に口の感覚がなくなった。

 そして、気付く。

 俺の体はゆーちゃんをすり抜けてしまっていたらしい。


「お、おにーさん……」


 振り返ると、ゆーちゃんもこちらを見ていた。

 なんか、新鮮な体験だな。

 キスしていたと思ったら、すり抜けてたなんて……。

 相手が幽霊だからこそ起きる謎の現象だ。


「ゆ、ゆーちゃん。今のは……」


「おにーさん、がっつき過ぎだよぅ……」


 ゆーちゃんはジト目でこちらを見ている。


「すまん。ゆーちゃんがあまりにも可愛かったから……」


 俺は言い訳を口にする。

 しかし、ゆーちゃんはジト目をやめなかった。

 むしろ、ジト目が強くなっている気がする……。


「……私は霊体だからね。普通の人には触れることさえできないの。聖魔法とかを使えるおにーさんは別だけど、それでも限界はあるんだよ?」


「ああ、そういうことか」


 俺は納得した。

 幽霊のゆーちゃん。

 みんなの魔力を吸収していったおかげで、こうして実体化が進んだ。

 それによりミリオンズのみんなも彼女の存在を認知したし、俺はこうして触れることもできる。


 だが、あくまで彼女は霊体。

 生身の体と完全に同じように扱うことはできない。

 こちらの聖気が不足していると、すり抜けてしまうようだ。


「すまんな、ゆーちゃん。嫌な思いをさせたか?」


「別に気にしてないよ……。ちょっとびっくりしただけだから……」


 俺としたことが、とんだ失態だ。

 まさか、キスしているときに相手の体をすり抜けてしまうなんて……。


「よし、もう同じ失敗は繰り返さないぞ。聖気を口や手に集中させて……ぬんっ!!」


「ひゃんっ!!」


 俺は気合いを入れて聖気をまとう。

 さっきまでは全身に満遍なく聖気をまとっていたが、今度は口や手にだけ集中させたのだ。

 ゆーちゃんの体を全身で感じることはできなくなるものの、すり抜けてしまうことはなくなる。

 今の俺にとっては、これがベストだ。


「いくぞ、ゆーちゃん……」


 俺は再びゆーちゃんにキスをする。

 今度はすり抜けることなく、ちゃんとお互いの唇が長く触れ合うことができた。

 そして――


「ぷはぁ……」


 俺はゆーちゃんとのキスを終える。

 とても充実した時間だった……。

 いや、俺だけが満足してはいけないな。

 ちゃんと、ゆーちゃんも満足させてあげないと……。


(さて、次はどうするべきか……)


 俺は考える。

 感覚的には、十分量の聖気を同時にまとえるのは2~3箇所といったところだ。

 今は口や両手にまとっている。

 このままでもイチャイチャすることはできるのだが、最終的に大満足まで到達することはできない。

 ならば――


「目覚めよ……! 俺のエクスカリバー!!!」


 俺はそう口にして、自分の体に手を伸ばした。

 そして――


「え? お、おにーさん……。いきなりどうしたの?」


 ゆーちゃんが戸惑っていた。

 まるで変態を見下すような目をしている気がする。


「ふっ……。俺のエクスカリバーが覚醒したのさ」


 俺はそう答えた。

 つまり、◯器に聖気を集中させたわけだな。

 ……いや、ダジャレを言いたかったわけじゃない。

 これこそが、今の俺に適した聖気の使い方なのだ。


「さぁ、ゆーちゃん。俺と一緒に天国を目指そう」


 俺はゆーちゃんに覆いかぶさる。


「ちょ、おにーさん!? 待って!!」


 ゆーちゃんは驚きの声を上げるが、抵抗はしなかった。

 なので、俺はゆーちゃんに迫り――


「神よ、俺に力を……! 聖剣・エクスカリバー!!!」


 そう叫んだ。

 すると、聖気をまとった俺のエクスカリバーが発光する。

 まるで魔法剣でも発動したかのような感じである。


「きゃんっ!!」


 ゆーちゃんが可愛らしい悲鳴を上げた。

 こうして、俺たちは聖気を駆使して仲を深めていったのだった。

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