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1192話 人工知能

 潜水中の隠密小型船で、ハッスルした俺たち。

 男は俺1人なので、普通に考えれば俺の限界が先に来る。

 しかし、俺には『精力強化』と『夜戦術』のスキルがある。

 結果……俺が力尽きる前に、みんなの方がダウンしてしまった。


「うーむ……。どうするべきか……。みんなに無理はさせられない。ここはやはり、自家発電しかないか……」


 俺はそうつぶやく。

 少しもったいないが、こればっかりは仕方がない。


「ピピッ! マスター、お困りですか?」


「ん? ああ、ティーナか」


 古代アンドロイドのティーナ。

 彼女は人間ではないため、俺のストライクゾーンに入っていない。

 外見年齢も10歳ぐらいだしな。

 ロリコンの俺としては、愛でる対象ではあるが……。

 実際にアレする対象に入るかと言われると、惜しくも入らない感じだ。


 ちなみにニムやマリアも出会ったときは幼かったのだが、時の流れと共に成長した。

 彼女たちは俺のストライクゾーン低めに入っていると言っていい。


「ピピッ! お悩みでしたら、当機にお任せください。マスターのご要望を叶えるべく、行動させていただきます」


「お、おう……」


 ティーナが手を挙げる。

 俺は若干気圧された。

 人から『任せろ』と言われて、素直に頼める内容ではないからだ。


「じゃあ……。ここは一つ、マッサージでも頼む」


 俺はそう要求した。

 古代アンドロイドの彼女に『ヤラせてくれ』なんて言えるはずもない。

 そもそも、そういう機能も付いていないだろう。


 ここは、事後の疲れを癒やすためにマッサージを頼むぐらいが適切だ。

 マッサージされてリラックスすれば、この昂ぶりも収まってくるはず。

 俺は誇り高きサザリアナ王国男爵にして、『紅剣』の二つ名を持つBランク冒険者、タカシ=ハイブリッジだ。

 一時の欲望なんぞに、振り回されたりはしない!


「ピピッ! かしこまりました」


 俺の要求にティーナが答える。

 彼女は俺の近くに移動すると、その場に座った。


「マスターの疲れを癒やすために、当機は全力を尽くします」


 ティーナがそう宣言する。

 マッサージに全力も何もないとは思うが……。

 まぁいいか。

 せっかくなので、任せることにしよう。


「ではマスター、まずはうつ伏せになってください」


「うむ。分かった」


 俺はティーナの指示に従い、寝床にうつ伏せになる。

 屋敷のベッドに比べると少し固いが、十分に快適だ。

 気を抜くと、そのまま眠ってしまいそうだな……。


「では……」


 ティーナが俺の背中に指を這わせる。

 小さい手が、俺の肩甲骨の辺りを力強く揉み始めた。


「ぐぅ……。い、痛い……な」


 俺は顔をしかめる。

 古代アンドロイドのティーナは、いろいろな面で高性能だ。


 まず特筆すべきは、その高度な人工知能。

 本当に人格を持っているようにしか見えない。

 また、『アイテムコンテナ』という便利な機能も持っている。

 そして単純に、腕力や脚力などもかなりある。

 彼女が人外であり加護付与スキルの対象外のため、具体的なステータスは不明だが……。

 その出力は、ミリオンズの面々と比べても遜色ないように思える。


「ピピッ! 失礼しました。では、このぐらいの強さでよろしいでしょうか?」


 ティーナが俺の声を聞いて、揉み方を少し弱める。


「ああ、それでいい。とても気持ちいいぞ……。その調子で頼む……」


「ピピッ! かしこまりました」


 ティーナが嬉しそうに返事をする。

 再び、俺の背中に指が這わされる。


「ぐぅ……。あ、ああ……。い、いいぞ……」


 俺はうめき声を漏らす。

 ティーナはすごいな。

 力任せではなく、しっかりとツボを押さえてきているようだ。

 しかも、少し痛いぐらいの力加減がちょうどいい。


「ピピッ! マスターはずいぶんとお疲れのようですね」


「その通りだが……。これは自分の欲望が招いた結果だ。甘んじて受け入れなければならない」


「マスターは自責思考がお強いようですね。マスターの疲れは、先ほどの交わりだけではありません」


「ん? どういうことだ?」


「ピピッ! マスターはご多忙です。領地経営や冒険者パーティの取りまとめ、そして今回の潜入作戦といろいろな要因が重なっていることが疲労の原因だと思われます。ご自身の欲望のみが原因ではありません。ご自愛ください」


 ティーナが告げる。

 俺は少し驚いた。

 まさか、古代アンドロイドのティーナに諭される日が来ようとは……。

 高度な人工知能だとは思っていたが、ここまで凄いとはな。


「ピピッ! 当機のマッサージは、いかがでしょうか?」


「すごく気持ちいいぞ。いいね、最高だ」


「ありがとうございます」


 ティーナが嬉しそうな声を出す。

 俺は引き続き、彼女のマッサージを堪能していく。

 だが、リラックスしたにもかかわらず、俺の熱情はまだまだ収まりそうにないのだった。

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